ロシアは「平和維持」を大義に掲げ、ウクライナに侵攻した。欧米諸国はそれを「でっち上げ」という。
紛争、争いが起きるたびに、「義」の危うさを感じる。
プーチン大統領は昨年7月に、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」という論文を発表した。これが正統性の根拠のなのだろうか。
プーチン氏が論文 ロシアとウクライナの一体性を主張: 日本経済新聞
それは彼にとっては真実かもしれない。また一部には支持するものもいるのかもしれない。ただそれを万人が受け入れているのだろうか。
小さな正義、大きな迷惑
かつてドイツのヒトラーが「わが闘争」を執筆し、熱狂的な支持を得る一方で、恐れおののくものもいた。そして、世界は大戦に巻き込まれていった。
個人的な小さな正義は、時として大きな迷惑になる。
論語に学ぶ
徳有る者は、必ず言あり。言有る者は、必ずしも徳有らず。仁者は必ず勇あり。勇者必ずしも仁有らず。(「憲問第十四」4)
立派な人格の人物ならば、その言葉は優れている。しかし、いいことを言う者は、必ずしも徳があるとは限らない。仁者は、必ず勇気がある。しかし、勇ある者が、必ずしも仁という徳を有しているということはないと意味する。
「仁」とは、自他のへだてをおかず、一切のものに対して、親しみ、慈しみ、情け深くある、思いやりの心のことをいう。
プーチン大統領には「仁」の心があるのだろうか。
仁に志さば、悪無きなり
孔子は「仁」を最高の徳におき、「苟(まこと)に仁に志さば、悪無きなり」(「里仁第四」4)という。
「ひたすらに仁愛の道を志すならば、けっして悪を行なうことはない」と、加地伸行は読むが、江戸期の儒学者伊藤仁斎は、「仁に志せば心もちはゆったりとして人を慈しむことになるから、おのずと人から悪まれることがなくなる、世間は公平によく見ている」と解す。
一方、萩生徂徠は、「仁に志しても人間は「過挙(あやまち)」を犯すことはあるだろうが、ことさら悪事をすることはなくなる」と読んでいる。dsupplying.hatenadiary.jp
いずれにせよ、仁を標榜するようになれば、悪事をたくらむこともなく、人からも憎まれることもなくなって行くということなのだろう。
欧米諸国が制裁に出てくることを承知の上で、それでもなおロシアは軍事行動を起こす。
見たくはないが、多方面からの侵攻が始まったようだ。世界最悪の原発事故といわれたチェルノブイリ原発を制圧したとの報道もある。
ロシア軍、チェルノブイリ原発を占拠 ウクライナ発表 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
「ロシアの全く無分別な攻撃を受け、チェルノブイリ原発が安全かどうかは断言できない。これは現在の欧州にとって最も深刻な脅威の一つだ」(出所:AFP BB NEWS)
首都キエフ近郊のホストメル空港では、ロシア軍のヘリコプターなどがパラシュート部隊を降下させ、戦闘が続いているという。
ロシア側動画に自作自演の跡 SNSで拡散、フェイクか: 日本経済新聞
見境なく悪事を働くようでは、「義」ともいえなくなっているのではないか。
AFPによれば、ロシア各地で、ウクライナ侵攻開始の決定に抗議する反戦デモが行われ、参加者約1400人が警察に拘束されたという。
ロシア各地で反戦デモ 1400人拘束 写真16枚 国際ニュース:AFPBB News
プーチン大統領には、ロシア国内の声にも耳を傾けてもらいたい。
世界の株式市場で株価が下落し、原油価格は高騰する。たった一人の決断によって、世界が大きな迷惑を被る。
ロシアは日本にとっても国境を接する国だ。天然ガスなどエネルギーばかりでなく、多くの水産物や食糧も輸入されている。
この行く先が気にかかる。
振り上げた拳を下ろしてもらたい。プライドが邪魔するのかもしれないが、そうできることが勇気なのだろう。勇気を正しく使ってもらいたい。
「参考文書」
ロ軍がウクライナ南部の一部掌握、チェルノブイリや首都にも迫る | ロイター