関西電力の入社式で、新入社員の代表が「関西電力の当たり前が世の中の当たり前と乖離していないか」と、答辞を述べたという。
朝日新聞によれば、「辛辣」とも受け取れる文言を受け止めることで、風通しの良さを社内外に訴える狙いもあるという。
関電新入社員、入社式で辛辣あいさつ 「世の中と乖離していないか」:朝日新聞デジタル
「皆さんが改革の担い手として活躍し、会社を変える原動力となってほしい」と、関西電力の森本社長が訓示し、これに応えるかたちで新入社員の代表が答辞を述べたという。
論語に学ぶ
巧言・令色・足恭(そくきょう)なるは、左丘明(さきゅうめい)之を恥ず。丘も亦之を恥ず。怨みを匿(かく)して其の人を友とするは、左丘明 之を恥ず。丘も亦之を恥ず。(「公冶長第五」25)
口先が巧み、顔つきが穏やか、そして媚び諂う、左丘明はこういうことを恥じた。私もまた同じだと孔子はいう。その人への恨みを隠して友人づきあいをするようなことを左丘明は恥じた。私もまたそのなのだと孔子がいったという。
複雑な現代社会においては、感じの悪い、さらに憎むべき人物とも交渉を避けられないことが多い。それをすべて拒否しようとすれば、世捨人になるほかはなかろう。ただそのさいは、自分の気持ちを匿してはならないだろう。(引用:「論語」桑原武夫)
儀礼化し、心がこもらない入社式になるのなら、あえて慣習から外れ、本音で語ってみるのもいいのかもしれない。
一方、ロシアでは、プーチン氏による長年の統治が続き、絶対君主のような存在になっているかのようである。側近は真実を伝えずに耳障りのよい情報を提供するようになっていると報道されている。
「巧言・令色・足恭」
口先が巧みにして、顔つきは穏やかにして、媚び諂う。
そうしなければ、ロシアでは生きていけず、世捨て人になるしかない。自分の気持ちを封印することが求められ、それが長引けば習慣化され、「ゾンビ化」して思考停止してしまうのかもしれない。
「巧言令色、鮮なし仁」 (「陽貨第十七」15)ともいう。
「君主などに言葉巧みに、顔色をやわらげて取り入る。そのような人物に人民の心などわかるはずがない」と意味する。
「仁」とは公の徳、つまり人民の幸福を願う心、私的な愛情を媒介とせず、真実ないし誠実が問題がされている領域という。
真実は堂々と公言すべきである。
しかし、正しいことならどんなに不味い表現で仏頂面をしてわめいてもよい、ということには決してならない。文明社会とは、内容の真実を美しい形式と調和させる努力ということではなかろうか。(引用:「論語」桑原武夫)
プーチン大統領が率いる与党・統一ロシアの国会議員がウクライナでの「特別軍事作戦」は完全に計画通りに進んでいると、BBCの番組に出演し述べたという。また、作戦の内容は国会に共有されていないとも話したそうだ。
ロシア議員、ウクライナ作戦の内容は知らないが「計画通り」 - BBCニュース
少しばかりこわい話である。媚び諂うことが当たり前で、思考停止してしまえば、プーチンが考えていることが真実となり、それを何の躊躇もなく公言できるようになってしまうのだろう。
ロシアの当たり前が国際社会の当たり前と乖離しているということなのだろう。
☆
プーチン大統領の支持率が急上昇しているという。ロシアの独立系世論調査機関が実施した調査で明らかになったそうだ。
ロシア世論調査、プーチン大統領の支持率83%-反対派の弾圧進む中 - Bloomberg
プーチン氏を積極的には支持していない人も、ロシアがNATO北大西洋条約機構の脅威にさらされているとの見解を受け入れているため、ウクライナを巡っては「正しいことをしている」と評価しているという。(出所:ブルームバーグ)
ウクライナ危機は当分続くことになってしまうのだろうか。