ウクライナのゼレンスキー大統領が、ドイツ連邦議会でビデオ演説したといいます。
ロイターによると、ショルツ独首相に対し、自由な欧州と不自由な欧州を分断する新たな「壁」を壊すよう要請したそうです。
ウクライナ大統領が独議会で演説、自由巡る欧州の「壁」解体訴え | ロイター
ウクライナがロシアとの戦争をやめ、自由を取り戻すのを助けてほしいと訴えたといいます。
支援に謝意を示す一方、ドイツはロシアとの経済関係を深めて戦費を稼がせた上、ウクライナのNATO 北大西洋条約機構加盟などの要望をはぐらかし、ウクライナと欧州の間に「新たな壁」をつくることに加担してきたと批判したと、JIJI.COMは伝えます。
ゼレンスキー氏、独を批判 経済一辺倒、「欧州に新たな壁」―議会演説:時事ドットコム
ゼレンスキー氏は、ドイツが計画凍結を余儀なくされたロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」について、以前からドイツに「戦争への準備だと警告してきたが、受け取った答えは経済的な計画だということだった。経済、経済、経済だ」と、ドイツが土壇場まで計画を維持したことを糾弾した。(出所:JIJI.COM)
論語に学ぶ
「辞(じ)は達するのみ」と、「衛霊公第十五」41にあります。
「文章を書くなら、達意であれ」との意味ですが、自分の意思を言葉によって、相手に伝えることが大切なことです。そのためには、何かのたとえを用いることは適切なことかもしれません。
ただ適切なたとえでないと、相手が誤解することもあると注意を促しているのかもしれません。
要人たちの発言
このようなご時世です。様々な要人たちが発言をしています。
岸田首相は参議院予算委員会で、「北方領土はロシアによって不法占拠されている」といい、「ウクライナ情勢を踏まえ、ロシアとの平和条約交渉を見通すことは困難」との認識を示したそうです。今この期において、北方領土に言及する必要があるのでしょうか。
プーチン大統領も相変わらず強硬で過激な発言を繰り返しているようです。聞くに堪えかねません。
「くずどもと裏切り者」はロシアから一掃-プーチン大統領が警告 - Bloomberg
ブルームバーグによれば、米国およびその同盟国とひそかに協力していると自身が見なしている「くずどもと裏切り者」をロシアから一掃すると警告したといいます。
論語に、「六十にして耳 順(したが)う。七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず」(「為政第二」4)とあります。
「六十にもなると、自分と異なる思想を聞いても、それが素直に耳に入り、いちいち反撥しなくなった。七十になってからは、自由の境地に到達したのか、意識的反省の結果ではなく、自分のしたいとおりのことをしていながら、しかも節度を失うようなことがなくなった」と意味します。
プーチン大統領も、岸田首相も60代、他の人の言葉にいちいち反撥せずにしてもらいたいものです。ましてプーチン氏はもう70歳が近づいています。節度を失って欲しくないものです。
一方、ゼレンスキー大統領は、まだ44歳、「不惑の四十」、四十にして惑わず、自分の生き方にもう迷うことがなくなったのでしょうか。この苦難を経験し、自分に与えられた使命を悟ったのでしょうか。
「君子は貞にして諒ならず」(「衛霊公第十五」37)といいます。
「君子は大正義に従うが、小信義にはとらわれない」と意味します。
「貞」とは正道、「諒」は小信と解するという。
「正道」の対義語は、「邪道」。邪(よこし)まな道。
「正義」の対義語は、「不義」。人として守るべき道にはずれること。
ゼレンスキー大統領に「君子」の姿を見る気がします。
論語では、「君子」と「小人」を区別します。指導者になり得るのは「君子」とし、求められる資質や人望などを、弟子との問答を通して明らかにしています。
君子には、小人がもつとされる専門的知識に加え、「徳」を求めます。人間性や人格性などはもとろんのこと、それに加え、表現力や構想力、決断力なども含まれるといいます。
穏やかな時代においては、社会、他人のための学問が尊ばれ、危機的状況になると、自分一個のため、自分を救うための学問が重要視されるようになるといいます。「徳」を養うということなのでしょう。
プーチン、岸田首相も政治の専門家かもしれませんが、この危機にあって、世を指導できる君子、為政者ではないのかもしれません。
専門家が重宝されてきた時代が続いていたのかもしれませんが、この危機にあっては徳を有する君子が求められているのでしょう。
さて、ゼレンスキー大統領の国会でのオンライン演説は実現するのでしょうか。その時、彼はどんなことを話するのでしょうか。