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迷走なのか、朝令暮改か、撤回された政府の水際対策 ~ 論語の教え #15

 

 政府が、オミクロン株の「水際対策」として航空各社に求めた国際線の予約停止要請を撤回した。

国際線の新規予約、一転再開 オミクロン株の水際対策迷走 | 共同通信

 朝令暮改といっていいのだろうか、感染拡大を防ぐ根幹の水際対策が迷走、わずか3日で一転、撤回したという。

「停止要請は航空局の独自判断だった」とし、斉藤鉄夫国交相首相官邸へも事後報告だった。(出所:共同通信

 にわかに信じ難い説明である。もう少し適切な言い訳があるのではなかろうか。

 

 

航空各社、突然の方針転換に困惑 国際線の予約停止取りやめ:時事ドットコム

 JIJI.COMによれば、この方針変更で、航空各社の間では困惑が広がっているという。

ある業界関係者は「まだ詳細が分からない。会社としての対応は話せる段階にない」と語り、情報収集や国土交通省との連絡などに追われていると明かした。同省は、予約停止に代わる新型コロナウイルスの感染対策を同日中にも定める見通しだ。(出所:JIJI.COM)

 方針が変われば、それに対応するものが混乱するのが常である。それ故、適正なるガバナンスが求められる。

渋沢栄一の戒め

「急ぐことによって大事を誤ることが多いし、また、小利の為に大局を見ることが出来なかったりする、故に速成、小利と云うことは大禁物である」と渋沢栄一はいう。まさに今回の政府対応のことをいっているのではなかろうか。

速やかならんと欲する無かれ。小利を見ること無かれ。速やかならんと欲すれば則(すなわ)ち達せず。小利を見れば、則ち大事成らず」と、論語子路第十三」17 にある。

dsupplying.hatenadiary.jp

 栄一によれば、「政治をなすには事を速にしようとしてはいかぬ。また、目前の小利に目が眩むようではいかぬ。早く事を仕遂げようとすれば、却つて政治の目的を達することが出来ないことになる」との意味だという。

 新型コロナへの警戒は怠ることはできないが、いつまでも感染対策が第一優先ということでもあるまい。対応を間違えれば、ウイズコロナ、ポストコロナへの移行が躓くことになりかねない。

 

 

化石燃料の奨励なのか

 COP26から1カ月もたたないうちに、日本政府が化石燃料からの脱却にブレーキをかける兆候を見せているとブルームバーグが報じる。

日本政府が化石燃料投資を密かに推奨-COP26から1カ月足らず - Bloomberg

 それによれば、政府関係者が水面下で、商社や石油元売り、電力・ガス会社などに対し、化石燃料からの脱却ペースを落とすことや、石油・ガス関連事業への新規開発投資を奨励しているという。

政府関係者は以前から使われてきた化石燃料の供給の長期的な先行きを懸念しているという。日本は輸入依存度が高いこともあり、電力需給の逼迫(ひっぱく)が全国的な停電につながりかねなかった昨年の教訓を念頭に、冬季に必要な燃料が不足する事態を今後も回避したい考えがある。(出所:ブルームバーグ

 経済産業省の担当者がブルームバーグの取材に対し、エネルギー基本計画では「エネルギー・セキュリティーの確保に関しては一切の妥協は許されず、必要なエネルギー・資源を安定的に確保し続けることが国家の責務である」とも記述していると説明したという。

 言い訳が用意されていたということであろうか。これではいつまでもたっても、目標を達成することができなくなってしまうのかもしれない。

 

 

論語の教え

 栄一曰く、「孔子は知と行とは別々に考えずに、学問と事実を行うと云うことは相並びて行すべきものとした」という。知行合一が求められていれば、言い訳は必要なくなるのかもしれない。

「其の身正しければ、令(れい)せずとも行なわる。其の身正しからざれば、令すと雖(いえど)も、従われず」と、「子路第十三」6にある。

 上に立つ者のあり方が正しければ、命令しなくとも、人々はその方針に従い、そのあり方が正しくなければ、命令したとて方針に従わないということを意味する。 

dsupplying.hatenadiary.jp

「まず己れ自身が品のよい政治を行っていけば、政治は自ら正しきを期することが出来るものである」と栄一はいう。

唯自己の利益にのみ親切を尽すことは、決して他に親切であると云うことは出来るものではない。

自己にのみ正しいと云うことは、他にも正しいと云うことは出来得ないものだ。

(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

 これなどは現在の日本の政治の状態を見れば直ちに納得が出来ることであると、栄一は指摘する。

「自己の都合のよい政治のみ行っているから、少しも政治界は廓清(かくせい=積もりたまった悪いものをすっかり取り払い、清めること)されず、寧ろ乱れて行くと云う傾向を示すものだ」。

 一連の報道をみると、政府のガバナンスに不安を覚え、この先も混乱が続くのではと心配になる。「この点などは大いに戒心すべき処である」と渋沢栄一はいう。栄一の教えに従ってみてもいいのではなかろうか。