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【人材育成の転換点になるか】学歴不問、JAXAの宇宙飛行士募集の採用方針変更 ~ 論語と算盤 #29

 

 JAXA宇宙航空研究開発機構が、13年ぶりに宇宙飛行士の新規募集を開始したそうだ。月周回宇宙ステーション「ゲートウェイ」や月面で活動してもらうことを想定しているという。

求む!!宇宙飛行士 JAXA、13年ぶり募集 学歴・文理は不問 | 毎日新聞

 応募条件を大幅に緩和し、初めて学歴や文系・理系の専門分野を不問とし、より多くの人材に応募してもらうために間口を広げたそうだ。採用人数は「若干名」で、2023年2月ごろに結果を発表する。

応募資格は、3年間以上の社会人経験があり(大学院の修士号取得者は1年、博士号は3年の経験とみなす)、身長149・5~190・5センチ、矯正視力、色覚、聴力が正常な者。 (出所:毎日新聞

 

 

人材育成のあり方

 経済産業省が、「経済産業政策新機軸部会」の一回目の会合を開催した。

脱炭素やデジタル化社会へ産業政策を議論 有識者会議の初会合 | 脱炭素社会への動き | NHKニュース

 NHKによれば、これまでの日本の産業政策の在り方を転換するための部会だという。

 参加した委員からは、「いま人材への投資を強化しなければ、日本はさらに立ち遅れる」といった意見が出されたという。今後の人材育成のあり方もこの部会で協議されるようだ。

 この会合の冒頭、「日本は過去30年間、経済が成長していない。今までの積み上げや延長ではない政策、政府が一歩前に出て取り組まなくてはならない政策として、経済産業政策の新機軸を議論してほしい」と、萩生田経産相があいさつしたという。

 この部会には、メディアアーティストの落合陽一氏やDeNA南場智子社長、経営コンサル冨山和彦などが委員として参加する。従来とは異なる顔ぶれに新たな意見が出てくるのか、期待していいのだろうか。

富みて、これを教えん

「産業が発達して来て国が富んでも、人民に教えと云うものがなければいけない」というのは渋沢栄一

「富と教えは相伴って進んで行かなければならないのに、現在の状態を見るように、富みたのにかえって、教えを排斥するような形勢になっている」と嘆く。

 孔子は二千年の昔において、既に富と教えと並行しなければならないと教えた。何れの時代においても、同じではないのかと栄一は指摘する。

「子、衛に適(ゆ)く。冉有(ぜんゆう)僕(ぼく)たり。子曰わく、庶(おお)いかな、と。冉有曰わく、既に庶し。又 何をか加えん、と。曰わく、之を富まさん、と。曰わく、既に富めば、又 何をか加えん、と。曰わく、之を教えん」と、論語子路第十三」9 にある。

 

 

孔子が衛の国に行ったとき、冉有は車を御していた。そして、車上からこの国の人民が多いことを見て、誠に良き国であると歎美された。すると、冉有は、人民が既に多くあったなら、この上如何なる施設をなした方が良からうかと問うた。すると孔子は、之れを富ませばよいと。冉有はまた問うて、民が既に富んだならば、その上は如何なる施設をなすべきであらうかと。

すると孔子は、それにはこれを教えなければならぬ。人は富んでいても、教えがなければ禽獣に等しいものである。故にこれを教えてを知らさなければならない。(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団)

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 この章は「政」を施す順序を乱してはならないことを教えたものであると、栄一は解説する。その順序とは、庶、富、教の三つ階段を経なければならないという。

 日本も人が増え、国が栄え富みたのに、「教え」がなかったばかりに衰退の途になってしまったということなのだろうか。

 JAXAの採用方針の変更が「人材育成」のあり方の転換のきっかけになればいいのかもしれない。

 

 

論語の教え

「子は四を以て教う、文、行、忠、信」と、「述而第七」24にある。

 孔子の弟子に対して説いた教育の大綱だとい栄一はいう。孔子の教育主義は、空論空理に流れず、実行を重んずると共に実行の動機となる精神に重きを置き、同時にこれらを飾る文事を重視したことを説明していると解説する。

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 古今東西を問わず、この文行忠信の四つを兼ね備えた人は、少ないもので、現在においては勿論、歴史上の人物中にすらあまり多くあるものでは無いという。

 この四つを兼備できるように人材育成ができるのが理想なのだろう。栄一の「論語と算盤」を教材にできないのだろうか。教育のあり方が問われ始めたようだ。