「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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【子 罕に利を言うとき、命と与に、仁と与にす】 Vol.208

 

子 罕(まれ)に利を言うとき、命(めい)と与(とも)に、仁と与にす。(「子罕第九」1)

  

(解説)

孔子は、たまに利についておっしゃられたが、そのときは、命や仁とともにであった。」論語 加地伸行

  加地は「命」は、天命、運命、使命など多様とするという。

 

 桑原の解説。

 この章は、「子 罕に利と命と仁とをいう」と読むのが通説であるという。

 しかし、それでは内容上、矛盾があるから、二つに切って今のようによむべしというのが、徂徠の提唱した新説である。

 徂徠はまずこの章を四字ずつに切ってよみ、孔子もときたま「利」に言及するが、その場合には必ず「命」あるいは「仁」と与にした、とするのである。そもそも孔子の道は、敬天と安民をもととしている。命と仁とは君子の君子たるゆえんであるから、これらのことをまれにしか言わなかったという道理はない。

安民とは天下のために利をはかることである

ただ、利には大利と小利があることを知らねばならない。一身の利益をはかるごときは小利である。君子は大利をはかるべきであって、もし道が民を利することのないものであるならば、それは道というに足らない。

 孔子も政治を志し、またそれを実践した人であるから、利ということを無視するわけにはいかない。その利を可能な限り仁によって柔らげ高めようとするところに、孔子の理想があったとい桑原はいう。

 

 孟子が、開巻第一に「王何ぞ必ずしも利を曰わん。亦だ仁義あるのみ」と豪語したのと、みだりに結びつけてはいけない。孟子は、孔子の古道からそれたのであるという。

 

 「関連文書」

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫