「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【有れども無きが若くし、実てども虚なるが若くし、犯さるるも校いず】 Vol.192

 

 曾子曰わく、能を以て不能に問い、多を以て寡(すく)なきに問い、有れども無きが若(ごと)くし、実(み)てども虚なるが若くし、犯さるるも校(むく)いず。昔者(むかし)、吾が友 嘗(かつ)て斯(ここ)に従事せり。(「泰伯第八」5)

  

(解説)

 曾子の回想談。「才能がありながら誇ることなく、才なき者にも優れている点については教えを乞い、知識が豊富にありながら、知識の少ない者にもたずねて得るところを増やし、徳がありながら、まだまだ努力し、人間として充実しておりながら、不十分とし、他者から不法、非礼な行為を受けることがあっても、報復したりしなかった。もう昔のことになったが、亡きわが同門はできていたのだ」論語 加地伸行

  

 桑原の解説。

 孔子の教えが、学者たるものは自分の才能や学識にうぬぼれてはならず、そうしたものが十分あるだけにいっそう普通人と同じように行動し、また普通人と協調し、その意見を聞かねばならぬ、とするところにあったことを、強調したのである。

 

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 「吾が友」は、ふつう顔回を指すとされるが、仁斎は孔子学派の諸賢者を指すとする。

 

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「有れども無きが若く」「実つれども虚しきが若く」といった表現は、老荘風ないし後世の禅好みで、孔子自身なら使わなかった措辞という感じがする。道学臭があって好ましくない。かなり時代の下ったころの記録であろうという。

 

 

 

曾子」、姓は曾、名は参。字名は子與。親孝行で有名だという。孔子より46歳年少で門下の年少グループに属したが、孔子の死後やがてその学団の長となって、儒教の正統を伝えた人といわれる。曾子から子思(しし:孔子の孫)へ、さらに孟子へと伝わったといわれる。

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫