「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

ダイハツの不正、全車種出荷停止の衝撃、見逃されていた問題の本質

 日々色々な問題が生じます。問題はいつになってもなくならないものなのだから仕方ない......そういってしまえば、それまで終わってしまいます。

 各分野のリーダーたちが「ああしたい、こうしたい」と願って行動するのでしょうが、時に現場がそこから逸脱してしまいます。適切に管理、マネジメントされていないと問題になります。様々な視点で分析し問題の本質に近づけば、効果的に改善することはできます。

 世の中には色々な問題があるものです。その共通性の中から、今の世相を知ることもできそうな気もします。

 

 

ダイハツ、全車種出荷停止

 ダイハツ工業が国内外のすべての車種で出荷停止を決めました。国の認証取得の不正問題で新たに不正が見つかったが理由といいます、ダイハツ経営陣は記者会見し、「お客様の信頼を裏切ることとなりおわび申し上げます」と謝罪しました。

トヨタから来たダイハツ社長、「しっかりした現場だと思ったことが問題」…記者会見の一問一答 : 読売新聞

 一連の不正について調査にあたった第三者委員会が記者会見で、「認証試験を軽視していたと言わざるをえない」などと指摘したといいます。

「自分さえよければよく、他人がどうであってもかまわない」といった自己中心的な組織風土自体が社風として深く根付いた可能性がある。(出所:NHK

 スピード開発に強みを持っていたはずのダイハツでしたが、逆にそれによって現場が極度のプレッシャーを受けるようになり、不正に至るようになったと第三者委員会は指摘したといいます。

 ルールや法律の軽視に、自己中心的な組織風土、ダイハツ強制捜査を受けた自民党と同じような風潮になっていたということなのでしょうか。

 トヨタ自動車から移ってきた奥平社長は「ダイハツに来て思ったのは、大変真面目な会社ということだ。他社で不正が発生したときも、ダイハツの現場は問題ないと自分自身で確認した」と述べ、「非常にしっかりした現場だと思ったことが問題だったかもしれない」「認証業務の現場が困った時に声が上げられず、苦労していることに心が至らず、猛省している」と語ったそうです。

 きちとしくみやルールは整い、また一見それに従い運営されているようにも見えたのかもしれません。しかし、組織風土は荒んでいたということなのでしょうか。それに如何にして気づくのか、難しいことなのかもしれません。

 

 

論語に学ぶ

子貢曰わく、如(も)し博く民に施して能(よ)く衆を済(すく)う有らば、何如。仁と謂う可(べ)きか、と。子曰わく、何ぞ仁を事とせん。必ずや聖か。堯(ぎょう) 舜(しゅん)も其れ猶諸(これ)を病めり。夫れ仁者は、己立たんと欲すれば人を立つ。己達せんと欲すれば人を達す。能(よ)く近くに譬(たと)えを取るは仁の方と謂う可きのみ、と。(「雍也第六」30)

「博く人民に恩恵を施し、多くの人を救済することができならば、「仁」と呼んでいいでしょうか」と、弟子の子貢が質問します。孔子は「それは仁どころかではない、「聖」と呼ばれる境地である。古代の聖王「堯」や「舜で」も達し難いと、悩んでいた。

 君は軽々しく理想の政治を語るが、いきなり天国に飛び上がるようなことを考えず、「仁」を求める人間としての実践を心がけるべきではないか。自分が立とうと願うときは、まず他人に立たせ、また自分があることに達したい、目的を遂げようと思えば、まず他人をそのようにさせる。すべて身近なところから考える、これこそが「仁」を実践する方法なのだ」と教え諭しました。

dsupplying.hatenadiary.jp

 理論好きで、抽象論に陥りやすい子貢に対して、あまり高遠なことばかりを考えず、もう少し具体的に身に即した発想をすべきであると諭したといわれます。より一般化し、いわば中間層の立場において、実践的に考えるべきと言おうとしたのではないかといいます。

「仁」とは人間と人間の善意の結びつきであって、孤独の個人の努力だけでは、決して「仁」の境地に到達しうるものではない。人間はつねに近くから遠くへと、善意の網の目を広げていかなければならないと、教えようとしたといいます。

 

 

 リーダーシップ論に長け、高いマネジメントスキルがあっても問題は見逃されることもあるのでしょう。スキルを高めるだけでは不十分なのかもしれません。これらを活かすセンスが求められていそうな気がします。

 

 

「参考文書」

ダイハツ 新たに174件の不正 全車種出荷停止 社長が会見で陳謝 | NHK | 自動車

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