日銀総裁の植田氏がたびたび国会に召集され、現時点では金融緩和を継続する必要があるとの発言を繰り返しています。一方で、４月の金融政策決定会合で実施を決めた金融緩和政策の多角的レビューを想定したかのような発言も始まっているようです。
金利環境、新しい「常態」に移行した可能性否定できず＝日銀総裁 | ロイター
現在は高水準にあるインフレがやがて落ち着き低金利の時代がまだ続くとの見方と、人々の物価観などの変遷により従来の低金利の時代からは変わっていくとの見方もある。（出所：ロイター）
これまでの非伝統的金融政策については「実践の積み重ねの少なさや効果測定におけるデータ制約といった課題があり、今後のさらなる理論構築・検証が求められる」と指摘し、政策手段の高度化、多様化により、従来よりも一段と丁寧な対外的コミュニケーションが求められるようになっていると述べたそうです。こうしたことが、「金融緩和政策の多角的レビュー」にも通じると説明したといいます。
学者出身の総裁ならではアプローチなのでしょうか。いずれにせよ、対話が重要であるとのことのようです。
国会 衆院財務金融委員会では、日銀が保有するETF 上場投資信託について言及しています。
「処分の具体的な方法に言及するのは早い」と指摘、その上で、処分価格は「時価をベースにすることになる」としたといいます。2%物価目標の実現が近づいてきたら、ETF処分の具体的な戦略について金融政策決定会合で議論して適切に情報発信していきたいと述べたそうです。金融緩和を正常化局面においてはこのETFの取り扱いが課題のひとつといわれています。
日銀保有ＥＴＦの簿価買い取り、許容されるか課題＝鈴木財務相 | ロイター
記事よれば、この委員会で、鈴木財務相も日銀が保有するETF処分に言及、少子化対策の観点も含めてETFを若年層に現物給付する活用案について「政府が財源確保目的で簿価で買い取るといったことが許容されるのかどうかという点を含め、考えていかなければならない」と述べ、課題があるとの認識を示したといいます。
色々なことを考えるのが政治家なのでしょうか。検討するのはよいにしても、課題が多いのなら、まずは基本と原則に従うべきのような気がします。
論語に学ぶ
詩に興り、礼に立ち、楽に成る。（「泰伯第八」8）
この言葉は、学問の順序を示しているといわれます。「詩経」を朗誦して感動を覚え、礼として規範を身に着け、音楽によって調和を知り、それによって均衡のとれた生き方、あり方が完成していくと意味します。
「詩」によって、その時代の風俗、習慣、人の情け等などを知り、またそれは歴史であるともいいます。詩に通ずれば、何が「善」であり何が「悪」であるかがわかり、それを区別できるようになるといいます。そして、自然と善いことに人の心は感動するといいます。それが学問の第一歩であるといいます。
また、孔子存命の頃の「礼」とは、その範囲は広く、道徳はもちろんのこと、法律もまた礼に含まれていたといいます。礼は人間の行いの手本や規則であり、これに従って作為するようになれば、自ずと迷うことはなくなり、邪道に入ることなく、他者に迷惑をかけることもなくなるといいます。
「楽」とは、音楽のことを指し、孔子の時代においては君子 教養人の必須科目でした。世の中、堅い厳粛なことばかりいっても治まることはなく、音楽を含めて修養を積むことで、心を和らげるコツを知ることができるとされていたようです。
声を調和させることで、知らず知らずのうちに、人の心とも調和するようになり、邪心が入る余地もなく、「淫する」、過ぎたり、度を越すようなこともなくなるといいます。また、楽に遊び心を調和すれば、道徳から外れたような行為をすることもなくなるといいます。
人となり
まだ植田総裁がどんな人となりであるか、わかりませんが、前の総裁のようなサプライズに頼り、市場を驚かせるようなことはなそうです。
学者出身であるから、学びの順序もわかっているのでしょう。よりアカデミックな方法でアプローチし、得られた成果の支持を得る方法も知っているのかもしれません。
面白味に欠けるのでしょうが、基本や原則を重んじることになるのでしょうか。
「参考文書」
ウォール街にまたも不意打ち、2023年の人気トレードすでに総崩れ - Bloomberg
日銀総裁記者会見：多角的レビューとは何か？ | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)
日銀財務、ＥＴＦ配当ないと収益下がり全体の姿厳しめに－植田氏 - Bloomberg
デジタル版「実験論語処世談」（４９） / 渋沢栄一 | デジタル版「実験論語処世談」 / 渋沢栄一 | 公益財団法人渋沢栄一記念財団
