「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

問題があっても解決できない国、あってはならない事故や事件の対策は厳罰化

 

 あってはならない事故や事件が起こるたびに刑罰が厳しくなり、規制が強化されたりします。それで治安が維持され、安全安心が保たれればいいのでしょうが、なかなかそうならないようです。

 北朝鮮からの弾道ミサイル発射を想定した住民避難訓練を昨年の3倍に増やす方針が政府が決めたそうです。必要なことなのかもしれませんが、それで平和を保つことはできるのでしょうか。どうにも安全安心が脅かされているように思えてなりません。

 解決しなければならない問題が明らかになっているはずなのに、何を変えるべきか、どう変えるべきかがわかっていないということでしょうか。それではいつまでも問題が解決することはないのでしょう。

「楽しい日本に」~堺屋太一さんの遺言

やがて空襲警報が鳴るようになって..... 物資はどんどんなくなって食糧難になり.... 町では「贅沢は敵だ」といい.... 防空演習が盛んに行われるようになっていき.... 大空襲が始まると、一億玉砕という人が現われ、みながこぞってその言葉を使うようになった....

誰が考えても、一億玉砕したら日本は負けだということは分かっていたはずです。しかし、そういうことを言うと殴られる。それが、今の日本と非常によく似ている。(出所:日経ビジネス

 これは故堺屋太一さんの言葉だそうです。あの戦争を体験され、その後官僚になり、作家としても活躍した人です。

堺屋太一氏の遺言「2020年までに3度目の日本をつくれるか」:日経ビジネス電子版

「官僚システムというのは、自分の官僚としての権限、立場、既定の方針などが変わらないことを前提としている」と堺屋さんはいいます。

「要するに、日本は降参しないということですね。それで勝てないとなったら、玉砕という選択しか残らない。それを当たり前のように吹聴して、それ以外のものを異端分子としてみんなで弾圧する」。それを普通の官僚がみんなやるというのが官僚システムの恐ろしさだと、堺屋さんは子供心に思ったそうです。

 そう言われるとうなずけてしまいますが、ただ想像すると先が心配なことになると感じてしまいます。

官僚は皆、ものすごい正義感を持っている。ちょうど戦争中の軍人が中国に侵略することも、真珠湾を不意打ちすることも、正義感を持ってやっていたのと同じように。(出所:日経ビジネス

 官僚を経験された堺屋さんは「戦後から続いてきた官僚システムを壊すべき」といいます。

「豊かな日本」を目指し、官僚主導で東京一極集中、規格大量生産のための終身雇用、年功賃金、社会は核家族で住宅は小住宅・多部屋式。生まれたらすぐに教育を受けさせ、教育が終わったら直ちに就職。就職したら蓄財をして、その後で結婚して子供を産んで、家を買って、老後に備えるために年金を掛けろと、官僚が個人の人生設計まで全てを決めていたと指摘しています。

それに従っていれば、それなりの中流になれた。いわゆるジャパニーズドリームですね。逆に、官僚が敷いたルートから外れると、とことん損をした。役人の言う通りに生きるのが良い国民で、それに反するのは悪い国民だと。だからニートとか、パラサイトとか、もう散々悪く言われるんですよ。(出所:日経ビジネス

 これからの日本は、官僚制度ではなしに、本当の主権在民を実現する「楽しい日本」を目指すべきといいます。しかし「日本は、どんなに楽しくても、少しでも危険があったらやめておけ、やめておけと、官僚が統制してしまう。それがマスコミや世間でも通っているんですよ」ともいいます。

今の日本はまるで監獄国家とも言えるほどです。その監獄国家から、幸福の追求ができる選択国家にしなきゃいけない。そうすると、ベンチャーを起こす冒険心も復活する。この官僚主導からいかにして逃れるかが、これからの2020年までの最大の問題なんですね。(出所:日経ビジネス

 防犯カメラが張り巡らされましたが、安全安心が守られているわけではなりません。そうではなくて、押しつけられている社会の空気感が変われば、より方向に向かうのかもしれません。

 ただどう官僚システムを壊すのか、改革を進めるのかとの問題が残ってしまいますが。

論語に学ぶ

伯夷、叔斉は、旧悪を念(おも)わず。怨み是(ここ)を用(もっ)て希(まれ)なり。(「公冶長第五」23)

 伯夷、叔斉の兄弟は、かつて残念だと思ったことをいつまでも想い出したりすることがなく、人を怨むこともなく、人からも怨まれることはなかったと意味する言葉です。

dsupplying.hatenadiary.jp

 この伯夷と叔斉は、潔白な性格で、不正不義を憎むことが甚だしかったといいます。ただ悪を憎んで人を憎まず、過去の人の旧悪をいつまでも根に持つような狭量では無かったといいます。それ故、人から怨まれることが少なかったそうです。

 今この時代、伯夷と叔斉のような人物が求められているのかもしれません。問題解決しようにも、既定の方針に縛られていては何も変えることができません。それを変えるには、強い正義感だけではなく、人を思う心がなければならないのでしょう。

 人から怨まれるのも、どこかに自己都合を優先することがあるのでしょうから。

 

 

「参考文書」

ミサイル発射想定の住民避難訓練を昨年度の3倍実施へ 政府|NHK 首都圏のニュース