東日本大震災が発生してから12年の歳月が経ちました。
大惨事となったあの原発事故が起きた福島県では多くの市町村に帰還難困難区域が残っています。
その福島県で追悼復興祈念式が開かれ、岸田首相も参加し、追悼のことばを述べたそうです。
福島で震災追悼式 岸田首相 廃炉や住民帰還支援進める考え示す | NHK | 東日本大震災
原子力災害からの復興に向けては、中長期的な対応が必要だ。引き続き、国が前面に立って、復興の前提となる、福島第一原発の安全かつ着実な廃炉とともに、帰還に向けた生活環境の整備や産業、なりわいの再生支援を進める。(出所:NHK)
心を籠め、真にそう願っての発言なのだろうかと感じます。
解消しない帰還困難区域
まだまだ復興が進んでいないのが現実ではないでしょうか。
帰還困難区域の92%は今も人が住むことができず、避難指示が解除され人が住めるようになった土地でさえ、まだまだ住民の帰還が進んでいないといいます。
事故から12年たっても手付かずの帰還困難区域 「古里失いたくない」「時間たち過ぎた」:東京新聞 TOKYO Web
こうした現実があるにもかかわらず、政府は防衛費増額のために復興特別所得税の一部を転用することを検討しています。
忘れることのない原発事故
原子炉が空だきになり、爆発が次々起きる、常識では「あり得ない」事故。にもかかわらず、原子炉の中で何が起きているのか、この先事故がどう進展するのか、多くの専門家に聞いてもよくわからない。その間にも環境に漏れ出す大量の放射能。「東京にこのままいても安全か」。(出所:毎日新聞)
その当時のことが思い起こされます。あのとき、これ以上被害が拡大しないことを根拠もなくただ信じるしかありませんでした。
3.11からわずか12年 岸田政権の軽すぎる「原発回帰」 | 青野由利の「時を駆ける科学」 | 青野由利 | 毎日新聞「経済プレミア」
「そんな体験をしたからこそ、事故からたった12年後の軽々しい原発回帰には頭がくらくらする」と記事記者はいいます。
信じ難い政府の原発建て替えや新増設の検討、老朽原発の60年超え運転を認める方針。
あの事故で改めて学んだのは、人間の知恵だけでコントロールできないものはあるということだったように思います。最悪の事態が発生しないように常に細心の注意を払うにしても、事故が発生すれば取り返しのつかないことになってしまうことを知りました。
こんなご時世になったからでしょうか、復興状況を伝える報道が今までに以上に気になります。
原発事故の教訓はどこへ…原発回帰を強める岸田政権 不十分な議論、再生可能エネルギーに消極姿勢:東京新聞 TOKYO Web
報道機関にも同じ思いがあったりするのでしょうか。国の政策に疑問を感じるのであれば、やはりそれを鋭く指摘するのもメディアに求められている役割なのでしょう。
委縮する日本
放送法を巡る総務省の行政文書についての報道も気になります。政府と関係する大臣の説明が的を得ず、胡散臭く感じます。何もおかしなことをしていないのであれば、正々堂々とすべてを白日の下に晒すこともできるのでしょう。
【元総務省官僚が証言】放送法解釈めぐる文書「忖度の走り」【報道特集】 | TBS NEWS DIG
みんな委縮して忖度して自己規制しているのでは?メディアは国民の知る権利に奉仕するために存在しているということ。それを忘れないでほしいということに尽きる(出所:TBS NEWS DIG)
論語に学ぶ
楚の狂接輿(きょうせつよ) 歌いて孔子を過ぐ。曰わく、鳳(ほう)や鳳や、何ぞ徳の衰えたる。往(ゆ)く者は諌(いさ)む可べからず、来たる者は猶(なお)追う可し。已(や)みなん已みなん。今の政(まつりごと)に従う者は、殆(あや)うし、と。孔子下(お)りて之と言わんと欲すも、趨(こばはし)りて之を辟(さ)く。之を言うを得ず。(「微子第十八」5)
楚の狂接輿という者が歌いながら孔子のそばを通り過ぎた。「大鳥さん、大鳥さん、世の中真っ暗、徳はなくなり、すんだことはそれまで。これから先、何とでも。やめなされ、やめること。お上はみな、やばいよ」と。孔子はその者と話そうとしたが、その者は小走りして敬意をはらいながら先へ行ってしまい叶わなかったそうです。
あの大臣は自分を取り繕うことに余念がなく、首相は福島県相馬市で、中学生になぜ首相を目指したのかと問われ、「日本の社会で一番権限の大きい人なので」と明かしたといいます。
いつになったら、ごく当たり前のまともな政治ができるようになるのでしょうか。
「参考文書」
東日本大震災と原発事故から12年 復興へ残された大きな課題|NHK 福島県のニュース
岸田首相「日本で一番権限大きい人なので首相目指した」 中学生の質問に|FNNプライムオンライン
社説:高市氏の「捏造」発言 耳を疑う責任転嫁の強弁 | 毎日新聞