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【CSV経営とマーケティング】トロピカーナの景品表示法違反はマーケターのしくじりか

 

 CSV経営を掲げるキリングループ、そのグループ会社の商品「トロピカーナ 100%まるごと果実感 メロンテイスト」(900ml)が、景品表示法違反に当たるとして、消費者庁から再発防止を求める措置命令を受けたといいます。

CSV」、ハーバード大学のマイケル E. ポーター教授などが提唱した概念で、共通価値の創造を意味するそうです。社会的ニーズや社会問題の解決に取り組むことで社会的価値の創出と経済的価値の創出を実現し、成長の次なる推進力にしていくことといいます。

 そうであるはずなのに、目先の売り上げのために小細工マーケティングしていては、高尚な理念もかすむことはないのでしょうか。

 

 

マーケティングとは消費者をそそのかして売りつけること」という悪印象になって消費者に浸透すれば、自分の首が絞まる。何のためのマーケティングなのか。マーケターとしての矜持が問われている。(出所:日経クロストレンド)

キリンビバ、スシロー、吉野家… 矜持はどこに?マーケ炎上事件簿:日経クロストレンド

 日経クロストレンドによると、実際は、リンゴ、ブドウ、バナナの果汁が98%を占め、メロン果汁はわずか2%だったといいます。香料を用いてメロンの風味を出しているため、実際に飲んでみると確かに“メロンジュース感”があるそうです。「メロン果汁100%」とうたいたいところだが、それはできない。苦肉の策として編み出したのが、「100% MELON TASTE」などの微妙な表現だったといいます。

自己満足の背伸び表現、ちょい盛り表現が、長年かけて築いてきたブランド価値を毀損してしまう。異業種のマーケターにとっても人ごとではない。(出所:日経クロストレンド)

 マーケターは目先の売り上げ目標をクリアしていく必要があるそうです。その上で、他社で起きたトラブルを、自分ごととして未然に防ぐ仕組みをつくるか、さまざまな誘惑、悪手・禁じ手が蔓延る中、マーケターとしてのコンプライアンス、インテグリティー(誠実さ、高潔さ)が問われていると記事は指摘します。

 

 

論語に学ぶ

質 文に勝てば、則ち野(や)。文 質に勝てば、則ち史(し)。文質彬彬(びんびん)として、然る後に君子たり。(「雍也第六」18)

 「質」とはもとであり、実質さらに素朴を、「文」はあやであるから、技巧、飾りを意味するそうです。「彬彬」とは「相い伴ばする貌(かたち)」。「野」とは野人または田舎者的ということで、「史」はもと史官のこと、文書などをつかさどる役人だが、ここでは悪い意味でのインテリないし文化人を指すといいます。この二つを均等に兼ね備えることが、人間文化の具現者としての君子のなのであるという。

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 文化には強靭で素朴な生命力がなければならないが、それがそのままあらわれては露骨であり、野性的にすぎて泥臭い。それを人間化するためには、優雅な意味での人為が不可欠である。しかし、それが過度になり、そのためにもとが衰弱すれば形式主義の虚飾になり、悪い意味での文化主義に陥ることはいうまでもない。(出所:論語 桑原武夫) 

 

 

 日経クロストレンドによれば、日本マーケティング協会は「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」と定義しているといいます。

 これに対し記事は「ものづくりから顧客への価値提供、その後の関係性に至るまでのすべてのプロセスが対象」と指摘、広告のみならず、商品やサービスの購入後や顧客同士の交流など、顧客体験CXのすべての領域に関わっていると解説します。

対談「なぜマーケティングは嫌われるのか」 顧客は“人”なんだ:日経クロストレンド

 一方、ここ最近のマーケティングの現場では、「囲い込み」や「刈り取り」といった顧客軽視の言葉が聞かれるようになったともいいます。

「文 質に勝てば、則ち史」

 傍から見れば、「質」を担当者たちが都合よく拡大解釈し、必要以上にミッションを設け、過剰に動き回るあまりに、逸脱行為につながったりするのではないでしょうか。

TikTokステルスマーケティング問題、吉野家の元常務による舌禍問題、スシローの「おとり広告」、悪質な調査会社による「NO.1広告」……。2022年、企業のマーケティング姿勢を疑うような事例が相次いでいる。こうした“しくじり”は今に始まったことではないが、多くのマーケティング担当者にとって「対岸の火事」ではないはずだ。(出所:日経クロストレンド)

 

 

 マーケティングがうまく機能すれば、それによって売上が拡大することもあるのでしょう。その結果はわかりやすく経営者にとっても誘因になるのかもしれません。しかし、それが行き過ぎを看過することになってしまうでしょうか。

 キリンビバレッジは、『自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献する』というキリングループの理念のもとで、清涼飲料商品やサービスを提供しているといいます。問題となった「トロピカーナ」の商品開発とマーケティングは、この理念に従っているといえるのでしょうか。