「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

狭まる国内市場、海外に進出していく焼肉の牛角、世界を目指すコロワイド

 

 焼肉の牛角を展開する外食大手のコロワイドが海外出店を増やすそうです。生産年齢人口減少により国内の外食市場は縮小が見込まれるとし、海外に成長の活路を求めるといいます。

「牛角」コロワイド、海外直営店5倍 中東にも進出 - 日本経済新聞

 記事によれば、海外での直営店を23年3月末の5倍となる700店舗にするそうです。東アジアで焼肉店牛角」を中心に日本食店を増やし、中東やアフリカにも進出するそうです。市場動向からすれば自然なことなのでしょう。

 はじめて「牛角」で焼肉を食したのはシンガポール店でした。当時は日本式焼肉店が少なかったので、たいへんうれしく思ったものでした。現地でも人気があったように記憶しています。現地の人に受け入れられてこそ、繁昌なのでしょう。馴染みだった日本料理屋の大将もよくそういっていました。駐在の日本人だけを相手にした商売では厳しい、いかにローカルに受け入れてもらえるか、なんて言っていました。

 海外での牛角店が増えるということは、それだけ現地の人の心を捕まえる秘訣を得たということでしょうか。日本の焼き肉文化が世界で広まっていくのもいいことなのでしょう。

 こうした事例を参考にして、海外で活躍する企業が増え、その企業の業績が改善していけば、日本経済も元気を取り戻しそうな気がします。また、こうした活動で日本という国の印象が変わっていけばいいのでしょう。もちろんビジネスとして成功させる必要はありますが。そのためにはやはり現地の人に受けれてもらわなければなりません。

ホンダの飛躍 

 大気汚染が激しかったころの米国で、排出ガス規制法「マスキー法」が成立、当時世界一厳しく、実現不可能といわれていたそうです。その規制値を、最初にクリアしたのが日本のホンダでした。排気ガスを減らし、少しでも空気が綺麗になるように願うホンダ社員によってCVCCというエンジンが開発されました。

 今のホンダからは想像できませんが、これを機にして四輪車メーカとしての地位を確固たるものにしたといいます。ただ、このエンジン開発にあたっては、当時社長であった本田宗一郎と若い技術者との間に軋轢が生じたといいます。

 ビッグ・スリーに肩を並べられると意気込む宗一郎に対し、開発者たちは「社の売上に貢献するためではない」と主張し、ぶつかり合ったといいます。

創業以来、会社のためではなく、社会のため、自分のために仕事をせよといってきた宗一郎でしたが、いつの間にか、会社優先の考え方に陥っていたのでした。若い技術者たちが、宗一郎の目を覚まさせ、「3つの喜び」という原点を呼び起こさせたのです。(出所:日経クロステック)

第3回 「仁」の章 ――人間尊重の「3つの喜び」 | 日経クロステック(xTECH)

 宗一郎は自分自身が企業本位の考え方に陥っていたことに気づかされたといいます。自分で描いた企業理念を誰よりも社員が理解し、それを実践していたということでした。

「作って喜び」「売って喜び」「買って喜ぶ」。 『3つの喜び』をモットーに掲げ、その実現に全力を傾けて努力するとしていたのが宗一郎だったのです。この『3つの喜び』は、独りよがりを戒め、Honda製品にかかわるすべての人々が幸せにならければならないと説くものといいます。

●買う喜び
「製品の価値を最もよく知り、最後の審判を与えるのはメーカーでもディーラーでもない。日常、製品を使用する購入者その人である。『この製品を買ってよかった』という喜びこそ、製品の価値の上に置かれた栄冠である」

●売る喜び
「Honda製品は代理店や販売店の協力と努力によって、需要者の手に渡るのである。その製品が優秀で安ければ必ずや世の中に迎え入れられる。よく売れれば利潤が生まれ、製品を扱う誇りや喜びがある。売る人に喜ばれない製品を作ることは、メーカーとして失格である」

●創る喜び
「これは技術者だけに与えられた喜びであり、独自のアイディアによって文化社会に貢献する製品を作り出すことは何物にも替え難い喜びである。その製品が優れたもので社会に受け入れられた時、技術者の喜びは絶対無比である」(出所:日経クロステック)

 社会課題を自分事として捉え、果敢に技術開発に挑戦して、それによって生れた製品をお客さまが喜んで購入していただくことで、空気も綺麗になり、社会課題も解決され、企業も大きく成長していく。美談です。記事はこれを「仁」の実践といいます。

論語に学ぶ

仁 遠からんや。我 仁を欲すれば、斯(すなわ)ち仁に至る。(「述而第七」29)

 仁は高遠無比、手の届かないところにあるものではないという。自分が本気でそれを欲求しさえすれば、仁はたちまちここに現前すると意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 仁は至難でもなければ安易でもない。それを現前せしめるのは意志の志の問題と桑原武夫は解説しています。 

「仁」が無く「義」のみが独り歩きして、正義のみを振りかざせば、かえって様々な角が立ったり、問題が起きたりします。「仁」が無く「礼」のみが先行すれば、心のこもらない単なる虚礼となります。そして、「仁」が無く「知」のみが優先されれば、冷酷非情になってしまいます。(出所:日経クロステック)

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 扱うモノは異なりますが、牛角もまた海外現地の人たちの心をつかまえることができるから事業は成功し、拡大していくことができるのでしょうか。これもまた「仁」の実践のひとつのカタチなのかもしれません。