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国債残高がついに1000兆円に、「入るを量りて出ずるを為す」にはならないか ~ 炉辺閑話 #66

 

 WHO 世界保健機関が、南アフリカで検出された新型コロナウイルスの新たな変異株を「懸念される変異ウィルス(VOC)」に指定し、「オミクロン株」と命名したといいます。

WHO、南ア株を「懸念される変異株」に指定 「オミクロン株」と命名 | ロイター

「疫学上有害な変化」が認められたとし、他の変異株よりも感染が急速に拡大する恐れがあるそうです。

 このニュースが流れると、早速、株価が下落を始め、世界同時株安の様相といいます。また、多くの国々で再び渡航制限が始まり、日本でも水際対策が強化されるようです。

 急激な感染拡大にならないことを願うばかりです。

 

 

国債残高が1000兆円に

 一方、政府は臨時閣議で、経済対策の裏付けとなる補正予算案を決定したといいます。その経済対策に必要な追加の歳出に、地方交付税交付金などを加えた一般会計の総額は35兆9895億円に上り、補正予算として過去最大になるそうです。

 不足財源を補う新規国債22兆円あまりを追加発行し、国債残高は21年度末に1000兆円を突破する見通しといいます。

 感染の再拡大を抑えて、景気を回復軌道に乗せるだけでなく、財政再建への道筋をいかに示すかも、政府にとっての課題とNHKはいいます。

 また、ロイターは、「欧米では、コロナ対策と同時に償還財源とする増税議論を進めており、歳出だけが先行する日本の財政運営に厳しい目が向けられそう」と指摘します。

入るを量りて出ずるを為す

 放漫財政が続けば、その弊を正すため、改革者が登場するものです。現政権はどのなのでしょうか。

 渋沢栄一によれば、明治の半ばに国の財政を切り盛りしたのが松方正義といいます。「入るを量つて出づるを制す」で、明治14年より30年までの間に幣制を確立したといいます。

 途中デフレに苛まれたようですが、日本銀行を創設し、日本銀行券の発行による紙幣整理、煙草税や酒造税や醤油税などの増税や政府予算の圧縮策などの財政政策、官営模範工場の払い下げなどによって財政収支を大幅に改善させ、インフレも押さえ込んだといいます(参考:Wikipedia)。

 

 

大隈侯なんかは外債で財政の円滑なる運転を計ろうとする意見であったが、松方侯はこれに反対で、輸出を奨励して正貨を外国より取り込み、これによって不換紙幣を償却し、兌換制を維持せんとする方針を定め、明治十四年より之に着手し明治十九年に至って兌換紙幣制度を完成したのである。

この間、通貨の収縮により一時物価の下落を来して非難の声起り、随分困難せられたこともあるが、これが為初一の精神を改むるが如きこと無く遂にその目的を達し、引続き金貨本位の樹立に就いて苦心し、これにも金銀両本位が可いとか何んだとかと随分世間の反対が多かつたに拘らず、飽くまで金貨本位制を樹立する方針を以て進み、明治三十年において之を確立するに至ったのである。(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

論語の教え

「子 子夏に謂いて曰わく、女(なんじ)君子儒と為れ、小人儒と為る無かれ」と、「雍也第六」13 にあります。

 小人儒とは利を事とする儒者で、君子儒とは義に就く儒者の事であるとの意味もあるようですが、栄一は、「これは宋儒の曲説で、君子儒とは道徳によって立ち、「経世済民」を以て我が天職なりとする儒者を指し、小人儒とは文芸を講ずるのみで、経世済民の念が毫も無い腐儒の事であらう」といいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 弟子の子夏が文学に長じ、高遠の理想を懐く儒者のように見え、孔子は、文筆にあくせくする小乗の儒者とならず、道徳を以て国を治め、経世済民の為に力を致す大乗の儒者となれよと勧告したのが、この章と栄一は解説しています。

 

 

経世済民

 栄一によれば、江戸元禄の頃に、「正徳の治」を仕切った新井白石が、経世済民を念とした君子儒と称せらるべき人だろうといいます。

 貨幣の質を改悪した元禄期、幕府財政は潤ったといいますが、実態の経済規模と発行済通貨量が著しく不釣合いになりインフレが発生していたといいます。この弊害を正したのだ白石といわれます。

経世済民」とは、世の中をおさめ、人民をすくうことを意味し、この言葉を略したのが「経済」と言われます。

 歴史に名を残すような改革者は、そうたびたび登場するものではないのでしょうが、もうそろそろ登場してもらわないとならないときになっているような気がします。