「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【企業で出世する人の共通点】それでも出世できない人もいる ~ 論語の教え #13

 

 大企業で、出世や昇進する社員には共通点があるという。

「日々の振り返りを行い」、「周囲と良い人間関係を築き」、「夢や信念を持っている」。その上、「学習習慣がある」という。

大企業の人事担当者の8割が「出世する人には共通点がある」と回答 どんな共通点?(1/2 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン

 ITビジネスオンラインによると、大企業の人事担当者を対象にした「社員の学習習慣」に関する実態調査からその結果を得たそうだ。

 

 

 出世の近道は、上司に取り入ることなんぞの声も聞こえてきそうですが、上司に取り入るにも、良い人間関係を築かなければならない訳で、案外、外れていないのかもしれない。

人間関係

「君に事(つか)えて数(はや)からんとすれば、斯(すなわ)ち辱(はずかし)めらる。朋友に数からんとすれば、斯ち疏(うとん)ぜらる」と、論語「里仁第四」26にある。

 これは子游の言葉だが、君主に仕える際、いかに良い意見でもあまりしばしば小うるさく言えば、かえって辱しめられることになってしまう。また友人に対しても同じで、あまり小うるさくすると嫌がられ疎遠になってしまう。

「相手を見て法を説け」、正論をうるさがって、こちらを疎(うと)んずるような君主や馬鹿な友人には、ほどほどにしておくがよいというのが、この章の意味だろうと、桑原武夫は解説する。

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 上司も十人十色で色々な人がいるのだろう。そうはいっても嫌われるよりは、好かれ方がいいのだろうし、そうはならなくてもほどほどの方がよいのだろう。口を禍の元にしてはならないということなのだろう。

 

 

論語の教え

弟子の司馬牛(しばぎゅう)が孔子に「君子とは」と問うと、孔子は「君子は憂えず懼(おそ)れず」と答える。すると司馬牛は、「憂えず懼れないければ君子か」と質問すると、孔子はこう答えたという。

内に省みて疚(やま)しからざれば、夫(そ)れ何をか憂え何をか懼れん」。(「顔淵第十二」4)

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「君子」とは、簡単に言えば、自ら内に省みて恥ずるところのない人を指すと、渋沢栄一はいう。

自分のすべての行動に対して人道を誤らず、道理に悖(もと)らず(=ゆがめず)、其の行に過ちがなく、品行が正しければ、自ら省みて疚しい点がない筈である。これ即ち君子である。(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

 人として、今日も恥ずべきことがなかったかと、日々振り返るのはなかなかできそうにもないが、せめてやましい、後ろめたいことはなかったのかと自分に問うことは習慣にしてもいいのかもしれない。

「今の世は、君子を容れられないとの説をなす者もあるが、何時の時代においても人格の光は滅するものではない」と栄一はいう。

 自己の立身出世の為め、あるいは富貴を積まんがため、正しからざる言動をなし、常に薄氷を履む思いでいることに比べれば、たとえ富みを積まず名を成さずとも幸福はその中に在る。「君子は憂へず懼れず」、大いに味うべきであるという。

 ただ難しい問題がひとつある。それは仕える側が上司を選べないということだろうか。

 孔子も、決して出世街道にのった人物ではなく、仕える人を幾たびか変えていた。しかし、なかなか機会をえることができずに、自分の大志を遂げることはできなかったようだ。そうした経験があったらこそなのかもしれないが、社会的には大いに出世したといっていいのではなかろうか。