「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【大いなる見栄、愚かなる虚栄】締めつけられる中国恒大と外遊するジャックマー、前澤友作氏のベーシックインカム社会実験 ~ 炉辺閑話 #56

 

 中国政府が、比較的小規模な都市における「超高層ビル」建設に関する規制を発表したそうだ。虚栄心を満たすことが目的の建設プロジェクトを減らすのが狙いとBBCが報じている。

中国、「超高層ビル」の建設を規制 高さ250メートル超は禁止に - BBCニュース

 それによると、人口300万人以下の都市で高さ150メートル以上の超高層ビルを建設する場合、特別な承認が必要になるという。ただし、いかなる場合でも高さ250メートルを超えるビルの建設は認められない。

 目を引く建物を建てることに執着する地元のディベロッパーを批判し、高額で見栄を張ったプロジェクトを取り締まる傾向が強まっているという。

今年初め、「醜い建築物」を禁止すると発表した。

「私たちは今、人々があまりにも性急に、歴史に残るようなものをつくることに躍起になっている時代にいる」

「全ての建物が、ランドマークをつくることを目的として建設され、ディベロッパーや都市計画者は斬新さや奇抜さを極めることで、その目標を達成しようとしている」(出所:BBC

 

 

 虚栄を張ってみせたところで分不相応になってしまえば、弊害が多い。わかっているにもかかわらず、文化の域を超えて、あえてその象徴となるような建物を作ろうとする。人の愚かさなのかもしれない。それを敢えて、明文化し規制していく。中国において、こうした規制強化が進んでいる。

 あたかも「弱きを助け強きをくじく」とでもいえそうな施策ばかりだ。

論語の教え

「子 疾(や)みて病(あつ)し。子路 門人をして臣為(た)らしむ。

病きこと間のときに曰わく、久しいかな、由(ゆう)の詐(いつわ)りを行ないこと。臣無くして臣有りと為す。吾 誰をか欺(あざむ)かん。天を欺かんや

且(か)つ予(よ)其れ臣の手に死なん与(よ)りは、寧(むし)ろ二三子(にさんし)の手に死すること無からんや。且つ予 縦(たと)い大葬(たいそう)を得ざるとも、予 道路に死なんや」と、子罕第九」12 にある。

dsupplying.hatenadiary.jp

 弟子の子路が、危篤状態であった孔子をみて、「先生はもう見込みがないと思い、いつもの素直でややせっかちな善意から葬式の準備を考え、「死者が諸侯や大夫である場合には、その家臣がいろいろの職務を分担する」、今は浪々の身であるが、かつては魯の大夫も務めた先生なのだから、平民扱いできるものか、大夫の格式の葬式をすべきであると考えて、弟子たちを大夫の家臣のように仕立てて配置した」という。

 

 

 孔子が危篤状態から持ち直し、ものがいえるようになると、孔子子路の「詐」つまりごまかしを咎めた。

 偽の家臣に手をとられて死ぬより、むしろ自分の二三子(弟子たち)に手をとられて死にたい。たとえ立派な葬式などしてもらわなくとも、この私が道端で野垂れ死することもあるまいさ、と虚飾を否定したと桑原武夫が解説する。

 虚栄は、現代人通有の弊害であると、渋沢栄一はいい、これは大いに慎むべき事であって、虚礼廃止し、生活改善していく必要があるという。

「これは、孔子がいわゆる虚礼を戒めたのであって、子路が師を思う情は掬(きく)すべきものであるけれども、その分量、すなわち程度が超えていた。この様なことは、今の世の中にも有り勝な事であつて、必ずしも悪いとは言えないが、その程度を超えてはならない」と指摘する。そう理解はできても、ついつい無意識のうちに、隣の家に負けまいと見栄を張ったり、SNSで虚栄を張ってしまうこともあるのだろう。

 

 

強きを挫くで、叩かれた中国恒大集団の行方

債務危機にある中国の不動産開発会社 中国恒大集団の許会長の豪華な暮らしぶりは、黄金時代には中国の富豪の中で目立ったものではなかったが、中国恒大がデフォルト(債務不履行)の瀬戸際にある今、同氏の個人資産は中国政府の標的になった」と、ブルームバーグがいう。

「中国恒大が債権者や納入業者への支払いなど義務履行に苦戦する中で、当局は許氏に個人資産を投じて危機を緩和することを求めた」。

香港豪邸を抵当に 40億円超調達―中国恒大会長:時事ドットコム

 JIJI.COMよると、恒大の許会長は、香港に所有する豪邸を抵当に入れたそうだ。これによる金融機関からの借入金は最大3億香港ドル(約44億円)で、恒大の債務返済に充てるとみられているという。

 恒大の許会長が、渋沢栄一が世話したある御仁と重なる。

 (その御仁が)失態を演ずるに至ったのは、全くその安んずる所を間違え、相当の給料を得て居りながら、量入為出の法を無視し、給料だけの生活に満足しないで、これに家族の者の虚栄心なども多少手伝い、収入以上の分不相応なる生活を営み、喰い込みに喰い込みを重ね、これを埋めるに借金し、借金には利子を取られ、益々借金がかさみ、遂にこの不始末となったのである。 (出所:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

ジャックマーの改心

 中国アリババもまた、その中国の規制強化の網にかかり、独占禁止法に違反したとして、28億ドル(約3200億円)の過去最高額の罰金を科された。

 その創始者ジャックマーが、ヨーロッパの農業技術と、アリババのクラウドやAI(人工知能)を組み合わせることで、中国の農業の近代化に貢献できると考えているという。

ジャック・マーが久々の外遊、オランダの農業技術を視察 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 Forbesによれば、ジャックマーは先週、農業と環境関連の技術の視察のためにスペインを訪問したという。

 これは見せかけなのだろうか、それとも改心なのだろうか。当局の指導があるのかもしれないが、それが理にかなっているのであれば、何も抗うこともないのだろう。端から虚栄を張らず、道理にもとづいてれば、遠回りをしなくても済んだのかもしれない。

 

 

 課題先進国といわれる日本、様々な社会課題があることが指摘されている。もしかしたら、その座も中国に奪われているのかもしれない。今の中国を見ていると、そう思ったりする。

 体制が異なり、単純比較はできないのだろうが、ただ、その課題解決の早さには驚く。

前澤友作氏のベーシックインカム社会実験

 ZOZO創業者でスタートトゥデイの前澤友作社長が、「1000人に100万円を個人で配った調査結果を共有します」とツィートしたという。

「政党代表の皆様へ」と題したそのツィートには、「ベーシックインカム社会実験」と題されたファイルも添付されていた。

 今回の衆院選では、格差社会の解消も争点のひとつにようだ。そのヒントになればとして、公開したのだろうか。それとも、なかなか課題解決に進まない状況に、業を煮やしたのだろうか。

前澤友作氏、岸田首相ら各党代表に1000人に100万配った調査結果共有 - 芸能 : 日刊スポーツ

 日刊スポーツによると、前澤氏は個人資産で約1000人に100万円、総額10億円を配布した上で、配布した人に約1年間、アンケートを実施、コロナ禍における現金給付の効果を継続的に調査したと、リポートの中で説明しているという。

サボらないし遊ばない。逆に、さらに働き、さらに勉強するとし、おかねを配られた人の生の声も紹介した。(出所:日刊スポーツ)

 この行為は前澤氏の見栄なのだろうか、それとも善意なのだろうか。

 いずれにせよ、お金の使い道は色々あるということなのだろう。また、その使い道によって、その将来が変わるということでもあるのだろう。