子曰わく、貧にして怨む無きは、難(かた)し。富みて驕(おご)る無きは、易し。(「憲問第十四」10)
(解説)
孔子の教え。「生活が苦しいとき、運命や社会を恨まないでいるのは難しい。しかし、金持ちだと、驕り高ぶることを抑えるのは、容易い」。(論語 加地伸行)
「学而第一」15の孔子と子貢の問答にこうある。
「子貢曰わく、貧にして諂うこと無く、富みて驕ること無くんば、如何、と。子曰わく、可なり。未だ貧にして楽しみ、富みて礼を好む者には若(し)かざるなり」と、
「諂」、へつらうとする解釈のほか、貧しさゆえに規範を守らないという解釈もあるという。正しくないこと、不義。
「驕」、もとは馬の背の高いことで、高所から見下ろす感じ。
「楽」、「楽道」(道を楽しむ)となっていたものもあったので、「楽」「好礼」はともに精神の向上と加地は解説した。
他方、「泰伯第八」11では、「周公の才の美 有るとも、使し驕り且つ吝めば、其の余は観るに足らざるのみ」といい、才能があっても、人柄が高慢であったり、吝嗇であるなら、その人について他に詳しく見る必要はないと、「驕り」「吝嗇」を批判する。
「公冶長第五」23では、伯夷、叔斉の「怨み」の少なさを紹介した。
この両名の顛末を見ると、「怨み」について考えさせられる。
(参考文献)