「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【管仲を問う。曰わく、人や、伯氏の駢邑三百を奪う。疏食を飯らい、歯を沒するまで怨言無し】 Vol.343

 

或るひと子産(しさん)を問う。子曰わく、恵人(けいじん)なり、と。子西(しせい)を問う。曰わく、彼をや彼をや、と。管仲(かんちゅう)を問う。曰わく、人や、伯氏(はくし)の駢邑(べんゆう)三百を奪う。疏食(そし)を飯(く)らい、歯(よわい)を沒するまで怨言(えんげん)無し、と。(「憲問第十四」9)

 

  (解説)

ある人が子産の評価を尋ねたところ、孔子は「恵み深い人だ」と答えた。「子西は」。「彼などについて聞くのか、彼などについて」。「管仲は」。「人物だな。大夫の伯氏の知行地である駢の三百戸を奪い取った。奪われた伯氏は粗食の貧しい生活をしながらも、生涯、管仲への恨みのことばを発しなかった。論語 加地伸行

  

管仲」、孔子より百年以上も前の人で、斉の国の実力者。国君の桓公を力で覇者にしたという。覇者とは、実力のなかった国王の下で、諸侯を率いた事実の最高指導者。

 「八佾第三」22で、「管氏にして礼を知らば、孰(たれ)か礼を知らざらん」と、管仲の非礼を断じた。

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「子西」は、子産と同族だという。

「子産」、氏は公孫、名は僑、字名が子産。鄭の国の貴族で宰相を務めという。孔子より一世代前の合理主義的政治家であったという。 

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 孔子は、その子産を「恵人」と呼び、管仲を「人」と呼ぶ。加地も管仲を「人物」と解する。君子とはまた別な表現ということであろうか。

 伯氏の知行地を奪い去り、奪われた伯氏に粗食の貧しい生活を強いた。しかしながら、伯氏は生涯、管仲への恨みのことばを発しなかったという。それは管仲にただ敬服(うやまって従うこと。感心しうやまうこと)していたということだけなのかもしれない。

「仁」を全うする君子であれば、力で他者を圧倒することはない。力に頼った管仲はそれなりの「人物」であったに過ぎないということであろうか。

 子産と管仲、同じ為政者、政治家であるなら、「恵人」であって欲しいものだ。「〇を見る会」を催したどこかの政治家が管仲にだぶってしまった。

 

 (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫