子曰わく、中人以上は、以て上(かみ)を語(つ)ぐ可きなり。中人以下は、以て上を語ぐ可からず。(「雍也第六」21)
(解説)
「孔子の教え。中級以上の者には、高度なことを教えることができる。しかし、中級以下の者には、高度なことを教えることはできない。(論語 加地伸行)
桑原の解説
孔子は、人間は後天的に教育や生活によって向上ないし堕落しうるものとするが、ただ例外的に最高の知者と最下等の愚者は、下降ないし上昇が不可能である、とみているという。「陽貨第十七」2の「唯 上知と下愚とは移らず」がそのことを表すという。
ここでの中人はこの両者の中間にある平均人のことであろうとする。
普通またはそれ以上の人間には、高級なことを話してもいいが、普通以下の人間には高級なことを話してもどうにもならない。
この言葉はおそらく孔子のあるときの表白であって、当為を示したものではないという。愚かしい者に高級な話をしてはならないというのではなく、「可」は有効無効を示すものとみたいという。多少憂き世をわたってきた人間は、この孔子のやや詠嘆的な発言を聞いて、そうだそのとおりだ、と思わざるを得ない過去にあったことを、やや痛ましく思い出すにちがいない。こちらに好意をよせてくれる人でありながら、文学の話、風景の話、などがさっぱり通じない人があるものである。そのつらい感じがここにあるという。
桑原は、孔子の人生観とみるのが穏当であろうという。
(参考文献)