明けない夜はないということでしょうか、日本の一人当たりGDPの伸びが、2013年から22年の間に現地通貨ベースで最も大きかったといいます。
長期停滞の典型と皆に見なされてきた国が、平均寿命や一人当たりの国内総生産(GDP)の伸びでいつの間にか主要7カ国(G7)をリードするようになり、最高経営責任者(CEO)や世界の投資家を苦しめてきたデフレに数十年ぶりに終止符を打った。それだけではない。「日出ずる国」日本はドル建てベースで世界のどの国・地域よりも大きい株式リターンをもたらしている。(出所:ブルームバーグ)
長期停滞を克服した日本、G7諸国の羨望の的に変身-Mウィンクラー - Bloomberg
少子高齢化が進む日本では同期間に人口が2%減少する一方で、一人当たりGDPは62%増の472万円(約3万2000ドル)となったといいます。数字の多寡ではなく、伸び率でいえばそういうことなのでしょう。理由はどうあれ、悪いことばかりではないということなのでしょうか。
皮肉や揶揄も含んでいるのかもしれませんが、世界3位の経済大国である日本を投資家目線で評価すれば、こういうことなのかもしれません。
さらに、「前世紀末の時点ではほとんど予想されていなかった繁栄は、人口動態の課題に直面する他のG7諸国にとり、富の創造を管理する上での教訓となり、一部の最も精通した投資家に大きな利益をもたらしている」といいます。
こうした利益は、マツキヨココカラ&カンパニー、三菱UFJフィナンシャル・グループ、住友商事、アシックス、日立製作所、日本製鉄、花王、日本酸素ホールディングス、オリンパス、太平洋セメント、東京エレクトロンなど、バリュー重視の株式戦略によってもたらせたといいます。
結果よければすべて良しとは言えないのかもしれません。他国と異なり成長分野のデジタルが経済を牽引するのではなく、従来型のオールド―エコノミーに頼ったままともいえそうです。
東京の魅力、日本の魅力
「東京は新しいパリだ」、文化的ダイナミズムを理由にその指摘するエコノミストもいるといいます。
東京の多様性は「移民に対する日本のますますオープンな姿勢の結果である部分が大きい」と分析。「日本は人種的に純粋な島ではない。むしろ、ごく普通の豊かな国であり、移民、多様性、マイノリティーの権利、人種差別、国民性といった、ごく普通の問題に対処している。(出所:ブルームバーグ)
こうした社会環境の変化とそれなりに良好という日本の経済見通しとが相まって、投資対象としては魅力的に映るといいます。労働年齢人口が減少する中で、女性の労働力参加の大幅増加が、株主の利益につながる企業改革のトレンドと合致していたともいいます。
示唆に富む言葉なのかもしれません。こうした視点で分析を深めてもよそさそうです。
ただ、首相をはじめ政権与党に自信を与えるようなものにはなっては欲しくないですが。これを踏まえれば国として、やらなければならないことがあるはずです。優先順位を違えることがあってはならないのですから。
経済対策
首相が経済対策を10月末にまとめるよう正式に指示し、「活発な設備投資や賃上げ、人への投資による経済の好循環を実現する」と述べたそうです。
岸田首相が経済対策を指示 投資促進など5本柱、「減税」も強調 - 日本経済新聞
この経済対策は与党との協議を経て決定され、対策をとりまとめた後、財源を裏付ける2023年度補正予算案を編成するといいます。
案の定ですが、その規模に関心が集まっています。過剰となって逆に経済に悪影響を及ぼさないことを祈るだけです。
また首相は、「経済成長の成果である税収増などを国民に適切に還元すべきだ」と訴えたそうです。やはり解散総選挙のことが頭から離れず、すべてはそれを軸にして思考しているのでしょうか。
論語に学ぶ
詩に興り、礼に立ち、楽に成る。(「泰伯第八」8)
詩の朗誦から始まり、礼法を基盤として立ち、音楽に完成すると意味します。
国民感情を知り、また諸々の状況を正しく分析して、今を知り、それを礼の精神に則り整えていけば、調和ある社会が近づいていくともいえそうです。
国は、経済対策を必要とする状況にあるとメッセージするのではなく、状況は好転しているとして、それを持続させるための政策に軸足を移し、優先させていくべきのような気がします。
東京の街が投資家にとって魅力的に見えるのであれば、その文化的側面を社会により広く定着させていくことが求められていそうな気がします。
しかし、解散が念頭にあれば、本来やらなければならないことが後回しされることになるのでしょう。
与野党に「秋解散」観測 補正時期、岸田首相また明言せず:時事ドットコム
どうやらその気配がありそうです。