岸田首相が防衛費増額のための増税について記者会見を行いました。聞くに堪えないので途中で視聴を止めました。
不安に駆られた人が犯す典型的な失敗の例のように思えます。
ロシアがウクライナに侵攻し、NATO 北大西洋条約機構加盟国が防衛費のGDP比2%を掲げると、直ぐにその流れに乗りました。首相自身が近隣諸国に脅威を感じ、不安に駆られて国民と国土を守れないと盲信しているからでしょうか。過去の痛ましく、苦々しい無謀だった歴史を忘れてしまったかのようです。
漁夫の利
「漁夫の利」という言葉があります。他人の争いごとに乗じて、何の苦もなく利益を得ることを意味する故事です。
その由来は、中国の戦国時代の時代の話で、趙国が隣国の燕に攻め込もうとしたとき、ハマグリと鳥のシギが争っているところに漁夫が通りかかって両方を捕まえたとの話をある人が趙王にし、「今、趙が燕と戦争をすると、ほかの国が漁夫のように得をすることになります」と提言し、これを聞いて燕に攻め込むのをやめたとの逸話から生まれた言葉です。
隣国との対立を深めれば、間違いなくそれによって利を得ようとする人があられるのでしょう。対立が深める当事国になるのではなく、「漁夫の利」を得る賢い国であるべきのように感じます。
不安を助長する「台湾有事は日本有事」
かつて安倍元首相が「台湾有事は日本有事」と発言していました。こうした言葉に頻繁にふれるたび不安が助長してしまうのではないでしょうか。
様々な想像を掻き立てます。台湾で有事が起こると、自衛隊がその防衛に参加するのかとか、それとも周辺地位の防衛に専念するのかとか、米軍はどう動くかなどなど。一大事のように思えてしまいます。まだ起きるかどうかわからないことで不安をたきつけられたらたまりません。
政府は、「国家安全保障戦略」など防衛3文書を閣議決定しました。「反撃能力」の保有が明記され、日本の安全保障政策の大きな転換となるといいます。また、外交・安全保障の最上位の指針である「国家安全保障戦略」には、中国について「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と記述し、米国の戦略と足並みをそろえたそうです。この他北朝鮮、ロシアが安全保障上の課題にあげたそうです。
何も好んで、米中対立の渦中に引き込まれていくもないのでしょう。同じ土俵に乗るのは愚策に思えなりません。米国と足並みを揃える意味がどこにあるのでしょうか。土俵に上がるのなら、行司役に徹するべきではないでしょうか。そもそも土俵で戦えるの2人だけなのですから。
相手の顔に泥を塗る
案の定、中国は日本の防衛力増強に警戒心を強め、反撃能力に関して「自衛隊の対外攻撃能力を高める」と警戒をあらわにしたといいます。また、「中国の脅威を軍拡の言い訳にしている」と強く反発し、日本周辺での軍事活動をこれまで以上に積極的に行っていく可能性があるといいます。
中国「軍拡の言い訳」 敵基地攻撃能力を警戒―安保3文書改定:時事ドットコム
日本の「中国を脅威と見なせば(そうでないのに)本当に脅威となってしまう」と警告。その上で「中国の総合的な実力は今や日本を超えている」と自信も示してみせた。(出所:JIJI.com)
記事によれば、中国外務省は「訳もなく中国の顔に泥を塗ることに断固反対する」と表明、「中国の脅威を誇張して自らの軍拡の言い訳とするたくらみは思い通りにならない」と反発したといいます。
ある力を働かせれば、それには必ず抗力、反発力が生まれるのは物理学の常識です。中国が反発するのは自然な反応なのでしょう。これでは、不安がさらなる不安を引き起こすようなもので、軍拡競争にならないかと危惧します。米中対立のはずがいつのまにか日中対立となり、米国の代わりに土俵に立っているようなものです。
不安、ハラスメントの自衛隊と防衛力強化
一方、自衛隊ではハラスメント行為が横行し、免職処分や懲戒処分が続いています。統制力の不安を感じます。また、首相は会見で、弾薬不足など自衛隊の継戦能力の問題を指摘し、また、多くの装備が整備不良の実態も明かしました。こんな自衛隊ですが、現に存在し、日本の防衛を担っています。
このような自衛隊に貴重なお金を使い、装備を継ぎ足したところでまとな運用ができないとみるのが自然なことではないでしょうか。
防衛費増額の前に、綱紀粛正を正し、装備運用を正しくする改革を断行すべきではないでしょうか。軍拡とするのではなく、必要最小限で精鋭な自衛隊に変革すべきような気がします。不足を語るのはそれからなのでしょう。
得をするのは米国か
護衛艦いずも、かがを空母化し、米製戦闘機F35を調達するそうです。また米製巡航ミサイル「トマホーク」も購入することになるそうです。米国の軍事産業ばかりが得をしそうです。
その米国は中国に半導体装置の輸出に新たな規制をかけ、オランダや日本にも参加を求めています。
ASML、新たな対中規制をけん制-既存措置で「お手上げ」とCEO - Bloomberg
(ASMLの)最先端極端紫外線(EUV)リソグラフィー装置の事実上の輸出禁止によって同社は「もう降伏状態だ」と述べた。ASMLの売上高に中国が占める比率は15%だが、米国の半導体製造装置メーカーは中国市場が売上高の25%余りを占めているとし、EUVリソグラフィー装置の規制措置は米企業に恩恵を与えているとの見方を示した。(出所:ブルームバーグ)
米国のずる賢さに感服します。これが「漁夫の利」ということなのかもしれません。
不安の連鎖、不安をばらまく首相
「日米同盟を基軸とし、積極的な外交をさらに強化する」と岸田首相は訴え、「日本に好ましい国際環境を実現するにはまず外交力だ。外交での説得力にもつながると考えて防衛力を整備している」と説いたそうです。
岸田首相「防衛力強化が外交の説得力に」 記者会見: 日本経済新聞
「近年、国と国の対立、むき出しの国益の競争が顕著になった」と指摘し「グローバル化の中での分断が激しくなっている。分断が最も激しく表れたのがロシアによるウクライナ侵略という暴挙だ」と語った。(出所:日本経済新聞)
自身の不安を周囲にばらまくのを止めて頂きたい、そういいたい。平和国家、日本の外交はないのでしょうか。
かつての自民党の政権 小渕内閣で官房長官を務めた強気なリベラルな政治家だった野中広務氏は「日本人は一色に染まりやすい民族である」と指摘、安倍元首相に対し、「君は岸(信介)の孫だが、同時に(安倍晋太郎の父で、非戦平和主義者として知られた)安倍寛のリベラルの血も受け継いでいることを忘れるないでほしい」と語っていたそうです。
井上成美と野中広務が泣くだろう。元首相秘書官がみた安保3文書 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
かつての自民党にはこうした気概をもった人物がいたということでしょうか。
また小渕内閣で首相秘書官を務めた米村元内閣危機管理監は、岸田首相の対応について「戦前の大きな過ちの原因の一つは、国家としての統一された基本戦略を欠いたまま、その場その場の状況への対処に終始し、あの無謀な戦争に迷い混んでしまった。岸田総理は、その状況主義に陥っていないだろうか」と指摘しているといいます。
悪影響
悪影響は様々なところに広がるのかもしれません。香川県議会では、政府の「反撃能力」の保有検討について、中止を求める意見書の発議案を説明した立憲民主党の議員に、自民党議員が「売国奴」とヤジを飛ばしたといいます。
岸田首相のお膝元広島の市議会では、旧統一教会や関連団体との一切の関係を断つと宣言する決議案を賛成少数で否決したといいます。
驚くことが起きるものです。首相の不安が不安の連鎖を生んでいるのでしょうか。
論語に学ぶ
君子重からざれば、則ち威あらず。学びても則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とする無かれ。過ちては則ち改むるに憚ること勿れ。 (「学而第一」8)
上に立つ者は、重々しい態度をしていなければ威厳がたもてない。つまり、国民にあなどられてしまう。上位者には学問をしていないものが多いが、それでは考えが固定して融通がきかない。学問をしなければならない。「忠」とはまごころ、「信」は約束を違えぬこと。「忠信」とはそうしたよい性質をもつ人間を指すといいます。
「まごころがあって嘘をつかない人と馴れ親しんで、自分より劣る者を友人とするな。過ちをおかしたならば、素直に改心して改めるべきである。こだわってはならない」。
岸田首相に忠告する言葉として、ピタリと当てはまる言葉ではないでしょうか。かつて首相は安倍元首相のことを友人とも呼んでいました。そんなことを思い出します。日本の未来が心配になるだけです。
日本同様、国防政策の大転換点を迎えているフィンランドでは、カイッコネン国防相が、来年初めに約2カ月の育児休暇を取得するそうです。
フィンランド国防相が育児休暇取得へ NATO加盟申請中でも:時事ドットコム
フィンランドはロシアと国境を接し、また、NATO 北大西洋条約機構への加盟を現在申請中で、第2次大戦後続けてきた国防政策を大転換しようとしています。
カイッコネン氏のような態度も、政府や自民党において求められていないでしょうか。
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日本では、地域の子どもに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」の数が増加しているぞうです。昨年より1317カ所増え、全国で7331カ所になったといいます。
子ども食堂、新たに1300カ所 コロナ以降、最大の増加―NPO調査:時事ドットコム
こども政策の遅れの影響もあったりするのでしょうか。多くのこども食堂が、物価上昇の影響を受けているものの、それでも「質や量を落とさないよう歯を食いしばって頑張っている」そうです。
政府自民党に加え自衛隊が、見習わなければならないことなのかもしれませんし、この事実を知って、お金の使い道の優先順位を見直すべきなのでしょう。
「参考文書」
反撃力保有へ歴史的転換 安保3文書、長射程ミサイル配備 | 共同通信
自民会派の香川県議「売国奴」とヤジ 敵基地攻撃能力に反対の議員に:朝日新聞デジタル
広島市議会、旧統一教会との関係断絶決議案を否決 | 中国新聞デジタル
岸田首相「国民の責任」発言に広がる反発 修正はしたけど…公約も説明もないまま 防衛費増の財源に増税:東京新聞 TOKYO Web