「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

普通の国になれない日本、増えるばかりの借金、止まらない増税、来年度予算も過去最高を更新見込み

 

 来年2023年度の予算案の総額が114兆円程度に達するそうです。今年度より6兆円以上増え、11年連続で過去最大を更新するといいます。防衛力の強化に向け複数年度で支出する「防衛力強化資金」を一括で計上するそうです。23日に閣議決定するといいます。

政府予算案114兆円程度 23年度、歳出過去最大 | 共同通信

 高齢化に伴い社会保障費も膨らみ、財政は一段と悪化すると記事は指摘しています。歳出は膨張し、歳入の多くを国債などの借金で賄う予算のままで、5年連続の100兆円超えになるそうです。

 

 

終わっていなかった戦後

「我が国の安保政策の大きな転換点」、政府が防衛3文書を閣議決定し、その後の記者会見で岸田首相は今回の防衛政策の見直しをそう表現したといいます。

 今回の防衛3文書の見直しを「戦後の占領政策からの脱却」と日経ビジネスは解説しています。

シン国家安保戦略、真の「大きな転換」は反撃能力にあらず:日経ビジネス電子版

 太平洋戦争が終結し、GHQ 連合国軍総司令部によって占領政策が進められ、それは無条件降伏した敗戦国日本から軍事力と経済力を奪うことだったといいます。

GHQは敗戦国・日本の軍隊を解体するとともに、それを支える経済力、具体的には重化学工業を排除する意図を持っていた。(出所:日経ビジネス

 この影響もあって戦後日本の政治は、軍事力と経済力を分けて考えるようになったそうです。防衛のための自衛隊防衛省、外交を担う外務省が安全保障に関係し、他の省庁は経済に集中していたと記事は指摘し、今回の「国家安全保障戦略」は戦後77年にわたって続いてきたこの不自然な状態を「普通」の状態に改めるものといいます。

 そして、最も大きな転換は「総合的な国力」との言葉に見て取れるといいます。

 記事によれば、「総合的な国力」とは、外交力と防衛力に加えて、経済力、技術力、情報力を含む力と定義されているそうです。経済が対象に加わり、経済安全保障推進法が制定されたといいます。

 敗戦国という地位に甘んじず、安全保障という名の下、今一度国力を回復させたいということなのでしょうか。総合的に国力が低下するなか、これでいいのかとの疑問を拭えません。

 

 

論語に学ぶ

三軍ありとて、帥(すい)を奪う可(べ)し。匹夫とて、志を奪う可からず。(「子罕第九」26)

「三軍」といわれるほどの大軍団でも、それが団結しないかぎり、その総司令官を奪い去ることもできる。しかし、一個の人間は、どんなに地位が低く弱い者であっても、その志を奪う、つまり強制して変えようさせることはできない。人間の意志の力、精神力の強さを力説し、同時に志の鍛錬と堅持の必要を強調したといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 多種多様な人が存在し、それぞれがそれぞれなりの「志」をもっているのでしょう。その「志」が完全に一致すればよいのでしょうが、そうならないのが常なのでしょう。

平和主義者でいるのは難しい時代

「無謀な戦争への反省でもあった基盤的防衛力構想の呪縛から抜け出した」、第2次安倍政権で国家安全保障局次長を務めた兼原教授は今回の政府方針について、こう述べたといいます。

戦後安保の呪縛解けた日本、国民の反発なき歴史的転換に中国軍拡の影 - Bloomberg

戦後70年余り続いた日本の安全保障政策が大きく転換した。第2次世界大戦の教訓から専守防衛に徹する「基盤的防衛力」から反撃能力を保有する「脅威対抗」政策に切り替わる歴史的な変更に、過去の安保法制ほどの反発はない。背景には着々と軍事力を拡大している中国の脅威がある。(出所:ブルームバーグ

「平和主義者でいるのは難しい時代」、欧州でも安保環境が変化し、スウェーデンフィンランドNATO 北大西洋条約機構に加盟申請し、ドイツは関係を強化したりしていると、上智大学政治学を専門とする中野教授が指摘してるといいます。

 

 

 2015年の安保法制議論では、国会採決となれば野党が演壇に押しかけていたが、今ではそうした光景を見ることもなくなった...... また、国会議事堂前で抗議するデモの人数も減り当時とは様変わりしているといいます。

 時代の流れとして受け止めるべきなのでしょうか。それとも長く続いた一党支配により世論も影響を受けただけということでしょうか。

普通の国

 防衛力強化の是非は別として、とあるエコノミストが今回の増税案の真意を探ろうとしています。

なぜ、岸田首相はこのタイミングで増税策を打ち出してきたのだろうか。1つの理由は、敢えて反対意見のあるテーマで主導権を握り、自分のリーダーシップを示そうとした可能性である。(出所:ロイター)

コラム:防衛力強化と増税、岸田首相の狙いとその先の本音=熊野英生氏 | ロイター

 財政再建に理解があるとみられていた岸田首相が、首相に就任するとあまり抵抗感なく補正予算の拡大に応じるようになった一方で、内実は「財政赤字の拡大が止まらないことに心を痛めている」との仮説を立てます。

どこかの時点で、財政規律が失われることに対して、規律をつなぎ留める何らかの策を組み込まなくてはいけないと、意を決していたのだろう。その「乾坤一擲」(けんこんいってき)の一手が、防衛力強化のための増税策だったと推理する。(出所:ロイター)

 増税の痛みを連想させることで、安易に歳出拡大できないというけん制効果が働く、そうした健全な感覚を取り戻そうとする試みが、今回の防衛費増額のための増税を行う意図とロイターは推論します。

 また、岸田首相が長期政権を意識するのなら、この先は財政再建を選択せざるを得ず、日本の政策運営を「普通の国」に戻していく作業であると指摘します。

 岸田首相が自身の野心から、様々な施策を実行しているとのこの仮説が正しいのなら、かなり危険な振舞いに思えてなりません。国民の安寧あってこそ国が存在するのでしょうから、それを等閑にし、自身と自党のことだけで行動するようになってはお仕舞いのような気がします。

 

 

 真に国民を思い、国の未来を考えるのなら、独断専行になりかねない行動を慎み、国民に選択をゆだることが可能となるような政治の再編が必要のように感じます。自民党を割るくらいの意識が求められているのかもしれません。異なる意見を無理やり集約化し、それを自身の保身に利用するのはやめてもらいものです。

 普通の国にしたいという大きな問題に挑戦するのなら、結論を急いではならないはずです。そういう重要な局面にあるということなのでしょう。