「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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またも上場会社が粉飾決算、見抜けぬ不正、正せなかったハラスメント ~ 炉辺閑話 #98

 

 またも東証1部上場企業における粉飾決算。製品マニュアルの作成支援を行う「グレイステクノロジー」が上場廃止となるという。

グレイステクノロジー上場廃止へ、架空売上の自転車操業が破綻 : 東京商工リサーチ

 TSR東京商工リサーチによると、過大な予算を設定しては、その達成に向けパワハラが横行していたそうだ。また、売上の前倒しなど、トップダウンで架空計上が横行、取り繕った業績で株価を上げ、株式売却益で架空売上を糊塗する騙しの経営が続いていたという。

 グレイステクノロジーは16年12月、東証マザーズへの新規株式公開(IPO)し、18年8月には東証1部に昇格したという。その粉飾はIPO前の16年3月期から始まっていた。直近21年3月期では、売上高の55%が架空、つまりウソの売り上げという状況だったという。

 

 

 なんとも恐ろしい話だ。監査法人は不正を見抜けず、また、上場審査も同様だったといっていいのだろう。上場にあたっては支援した企業もあったのだろう。

 ニッチな市場の製品マニュアル作成のデジタル支援が大きな成長市場に見えたのだろうか。

日経の“黒歴史”、粉飾決算で上場廃止のグレイステクノロジーをつい2年前、大絶賛 – SAKISIRU(サキシル)

 架空売り上げで急成長していたグレイステクノロジーは、「日本経済のけん引役として期待される中堅中小企業」として2020年の「NEXT1000」に選出されていた。

 従業員1人当たりの売上高が大きく伸した企業として断トツのトップとなり、そのランキングをまとめた日本経済新聞に、「近年は利益重視の経営を掲げており、採算の良い案件を厳選してきた」、「過剰な従業員を抱えることなく、高収益体質に転換した」などと記されていたという。

 一時は4235円まで上昇した株価は、27日の終値では29円だったという。

 TSRによれば、「特別調査委員会の調査報告書」では、亡くなった元会長の罵倒や恫喝、人格否定について、「明らかに社会的相当性を逸脱するもの」と厳しく指弾しているという。「元会長に迎合、盲従する経営陣は架空売上を止めることができず、上場会社の経営陣として備えるべき最低限の道徳意識も欠落していた」と断罪しているそうだ。

上場会社として信じられない経営は、投資家や株式市場への信用低下を招いた。
グレイステクノロジーの経営再建は、容易ではないだろう。初心に立ち返り、信頼回復への積極的な情報開示が第一歩となる。だが、その前に顧客と従業員、その家族からの信頼回復のため、いばらの道を歩む覚悟が必要だ。(出所:東京商工リサーチ

 

 

論語に学ぶ

「子 南子に見(まみ)ゆ。子路 説(よろこ)ばず。夫子 之に矢(ちか)いて曰わく、予の否とする所の者あらば、天 之を厭(す)てん、天 之を厭てん」と、「雍也第六」28にある。

 孔子は56歳の時、魯の執政の地位を捨てて、衛の国に赴いた。時の衛の君主霊公の夫人南子に孔子が謁見したそうだが、生真面目な弟子の子路がむくれたという。君主の夫人ではあるが評判が悪く、謁見することが許されるべきであるどうか。孔子は、自分は誓ってミスは犯していないと答えたという。

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 この件については、いろいろの噂をよび、それが後に伝説化したといわれるが、真実はよくわからない。孔子がもしかして、南子を媒介にして君主霊公の心をつかみ、衛の国の政治に影響を及ぼしたいという野心があったのかもしれないと読みもできると桑原武夫はいう。

 

 

 いずれにせよ、いつの時代にあっても上席者に礼を尽くすのは当然であって、悪評高いといって無下にはできない。上席からの指示があれば、従わなければならないこともあるのだろう。

 そうであるなら、なぜ孔子は「天 之を厭(す)てん」とまで言う必要があったのか。やはり桑原が指摘するように孔子に野心があったのだろうか。

 一方、その真面目な子路が「主君にはどう仕えるのか」と孔子に尋ねると、「欺くこと勿れ。而して之を犯(いさ)めよ」と答えたという。

 時として、たとえ上席であろうと、問題があれば諫めなければならないということであろう。南子事件の子路の行動がそういうことであろうか。ただ現実の社会ではなかなか難しいことなのかもしれない。

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 美辞麗句を連ねれば、現実が大きく魅力的に見えることもあるのだろう。

「欺くこと勿れ。而して之を犯(いさ)めよ」は、グレイステクノロジーに加担することになってしまった太鼓持ちたちが学ぶべき言葉なのかもしれない。