「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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破綻したFTXのずさんな経営実態、なぜ投資家たちは多額の資金をつぎ込んだのか

 

 経営破綻した仮想通貨交換業大手のFTXトレーディングの新たなCEOに、巨額の不正会計事件を起こしたエンロンの破綻処理で陣頭指揮を執ったジョン・レイ氏が就任したといいます。

FTX「企業統治の完全な失敗」 新CEOが創業者批判: 日本経済新聞

 記事によれば、レイ氏は「40年以上に及ぶ企業再生のキャリアにおいて、今回ほどの企業統治の完全な失敗は見たことがない」と指摘し、前CEOで創業者のサム・バンクマン・フリード氏による企業統治不全が破綻につながったと批判したそうです。

レイ氏によるとFTXグループの多くの企業では、取締役会を一度も開いたことがなかったという。

バンクマン・フリード氏は一定の時間がたつとメッセージが自動削除されるアプリケーションで多くやりとりしており、従業員にも勧めていた。意思決定に関わる記録が残っていないという。(出所:日本経済新聞

 

 

 また、FTXの現金残高を正確に把握できないといいます。また、インターネットから隔離された「コールドウォレット」に収められた仮想通貨の残高は7億4000万ドル相当にすぎず、本来あるべき額が消失している状態で、債権回収が難航することが必至な状況になっているそうです。FTXの負債総額は数兆円規模とされ、債権者は100万人以上と見込まれているといいます。

 そうであるにもかかわらず、FTX本社の所在地中米バハマでは、従業員らが住居購入など私的な目的に会社の資金を使っていた事態も明らかになってきたそうです。FTXの出納管理もずさんで、従業員はオンラインチャットで経費支出の申請をし、管理者は「絵文字」で承認していたとそうです。

 こんなずさんなFTXに対し、著名ファンドやベンチャーキャピタルが多額の出資していました。何ともお粗末なことなのでしょうか。どういう評価基準で出資したのかと疑問が生じます。

 他方、仮想通貨でないマネーの世界ではESG投資が主流になり、「G」企業統治が問われるようになりました。周知されているはずの「G」が機能せず、なぜこうした事態に発展してしまうのでしょうか。人間の貪欲さで片付けてしまっていいのでしょうか。

 

 

 日本では政府がスタートアップを支援し、事業化するための基金を新設するそうです。こうした中から、革新的な技術が生まれ、次の成長を狙う企業が育つことが期待されています。こうしたスタートアップ企業に学生たちも注目し入社したり、インターンで働く人も増えているといいます。

 一方で、日本のスタートアップは、最初の関門である上場を果たすと、その後、株価が低迷するという傾向にあるといいます。

日本のスタートアップが上場後に株価低迷する、3つの理由 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 記事によれば、日本のスタートアップ企業の1つの成長モデルとして、創業してから複数回にわたってベンチャーキャピタルなど投資家から資金調達を繰り返し、事業を拡大させ、上場するというものがあるといいます。しかし、上場を果たすと、取引初日以降、だらだらと株価を下げてしまうことが多く、これを「初値天井」といい、「上場ゴール」と呼ばれることもあるそうです。

上場までの期間で下された企業価値の評価が正しくないということだ。(出所:Forbes)

 VCをはじめとする投資家が、何を評価してそこまで高い株価を認め、出資するのかと、記事筆者は疑問を呈します。現実に上場後、株価が伸び悩むことからすれば、最もな指摘なのでしょう。

 目をギラギラさせた野心家たちの巣窟になってしまっているのでしょうか。一向に社会課題の解決が進まないこともわかるような気がします。スタートアップエコシステムに、もしかして社会全体に規律のゆがみが生じているのかもしれません。

 

 

 他方、昨今「インパクト投資」、インパクトエコノミーが加速度的に進んでいるといいます。その規模は21年度調査では20年に1兆3000億円になったといいます。

インパクト投資」とは、経済的利益とともに、測定可能で有益な社会的または環境的影響を生み出すことを目的として行われる投資と言われ、社会的リターンと金銭的リターンを同時に追求する投資のことといいます。

グローバル経済で「主流化」が加速。日本でもインパクトエコノミー第二章へ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 記事は、SIIF 社会変革推進財団の取り組みを紹介し、実践知づくり、場づくりのため、インパクトエコノミーラボを新設、グローバルな最先端の知見を収集し、3つの課題領域(医療、介護、地域経済)へ投入、そこで得た実践知をもう一度ラボに戻しインパクトエコノミーの新しい知として社会に共有しているといいます。

経済の本流では、インパクト化が進んでいるが、従来の経済活動のなかからでは、システムチェンジの種は出てこない。社会で共同的に、システムチェンジのためのふ化装置づくりが必要だ。(出所:Forbes)

 良い取り組みのように見えますが、動機は何なのでしょうか。「公共性」を育て、そこから持続的な社会を目指すものなのでしょうか。それとも.......とも考えてしまいます。

 ほんとうに、社会的リターンと金銭的リターンを同時に追求することはできるのでしょうか。人間の本質に貪欲さがあるのなら、その欲望を制御する何かがない限り、どこかで暴走が起きることも否定できないような気もします。

 

 

論語に学ぶ

子華(しか)斉(せい)に使いす。冉子(ぜんし)其の母の為に粟(ぞく)を請う。子曰わく、之を釜(ふ)を与えよ、と。益さんことを請う。曰わく、之に庾(ゆ)を与えよ、と。冉子 之に粟五秉(へい)を与う。

子曰わく、赤(せき)の斉に適(ゆ)くや、肥馬(ひば)に乗り、軽裘(けいきゅう)を衣(き)る。吾 之を聞けり、君子は急に周(あまね)くして富めるに継がず、と。(「雍也第六」4)

 孔子が弟子の子華を斉国に使い出したときのこと、やはり弟子の冉求が子華の母に留守手当として粟をやって欲しいとお願いすると、孔子は「一斗あまりあっておけ」といった。それは少なすぎるので、もう少し増やしてやってくださいとお願いしたとき、孔子は「それなら二斗八升ほどやれ」と指示したのに、冉求は十四石、孔子のいいつけの50倍の粟を与えたといいます。孔子はそれを知ると「子華が斉国に使いしたとき、よく肥えた馬に乗り、軽い上等な毛の外套を着て行ったじゃないか。生活に余裕があるわけだ。世間ではよくいうではないか、「君子は、生活の危急にある者には援助するが、富める者に対しては、さらに継ぎ足すことはしないものだ」といったといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 本来経済活動においては、企業は自分たちより弱い立場にある人のために働くべきなのに、上ばかり見て、その逆のことばかり実行するから、格差が生じるのかもしれません。

 経済を気にするばかりに、「済民」、人民を苦しみから救うこと、人のために働くということを忘れてはいないでしょうか。これが理解できれば「お金」が手段に過ぎないとわかるはずです。

 お金は正しく使ってこそ意味をなし、それが満足につながるのかもしれません。お金を必要以上に過剰に蓄財することを目的とするから貪欲、強欲になってしまうのでしょう。

 生きているうちに使える金額で十分とよく言われます。しかし、それが不足するようになっていることが現在の問題なのでしょう。そして多くの人がそれによって将来に不安を感じるようになっているのではないでしょうか。

 経済がこの問題を解決することはできないのが不思議なことです。

 

 

「参考文書」

破綻した取引所FTXは「最悪の企業統治」、新CEOが痛烈に非難 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)