「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

物価上昇と人手不足が深刻な米国、日本に飛び火はないのか ~ 論語の教え #10

 

 コロナ渦からの経済回復で、世界中で物価が上昇しています。米国は顕著で、物価上昇率が6ヶ月連続で5%を超えるといいます。供給制約と人手不足が、物価を押し上げる要因になっていて、その構図は今しばらく変わりそうにないと言われます。

 その米国では、「ウーバー」がなかなかつかまらないとか、カフェでは注文したスムージーができあがるまで20分以上待たされるなど、人手不足を実感する機会が増えているといいます。

 

 

深刻な人手不足

 NHKによると、米国では人手不足を背景に最低時給が跳ね上がっているといいます。

 スターバックスは15ドル(約1700円)、アマゾンは18ドル(約2000円)に最低時給を引き上げると表明し、人材確保に躍起になっているそうです。

ビジネス特集 時給2000円でも… アメリカで働き手が足りない事情 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース

在宅で、コンピューター1つあればできる仕事があるのに、過酷で感染リスクが高い接客業に本当に戻る必要があるのかと疑問に思っているわけです。こうした人に働いてもらうには、時給を上げるのではなく、仕事の質や環境を改善することが必要です。 (出所:NHK

「仮に感染拡大が再び深刻になっても、失業するおそれが低い仕事に就きたい」。

 単に時給を上げただけでは人手不足の問題は解決しないと、専門家が指摘しているそうです。

 日本国内でも同様の傾向が見られるのでしょうか。飲食店などで人手不足と聞きます。

論語の教え

富 求む可(べ)くんば、執鞭(しつべん)の士と雖(いえど)も、吾も亦(また)之を為さん。如(も)し求む可からずんば、吾が好む所に従わん」と、論語「述而第七」11にあります。

 まっとうな生き方によって富を得られるならば、どんな賤しい仕事についても金儲けせよ。しかし、まっとうではない手段をとるくらいなら、むしろ貧賤でいなさいと、渋沢栄一はこの章の意味を解します。

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 感染のリスクが高く、国からの支援がありながら、真っ先に首が切られるような職場では、まっとうな生き方をしていると感じることは出来ないのかもしれません。

 また、旅行代理店の「ワールド航空サービス」のように、働いていながらも会社が雇用調整助成金を不正に受給しているようなことがあれば(疑い)、これもまた、まっとうな生き方ではないのかもしれません。

 

 

 経営者にとっては難しい問題なのかもしれません。従業員が満足できる環境を、まだ新型コロナが完全に収まっていない中で作っていくことが求められています。それは物理面だけでなく、精神的な面においても言えることなのかもしれません。

ものごとには順序がある

「斉(せい)一変すれば、魯に至らん。魯一変すれば、道に至ら」と、「雍也第六」24にあります。

 一切何事にも順序のあることを教える教訓であると栄一はいいます。

斉は強い国であつたが、一般に功利主義が盛んで礼楽風教よりも功利を先にする傾向があったものだ。また、魯は当時弱国ではあったが、礼楽を貴び信義を重んじていた。斉と魯との間には国風の相違があるが、斉といえども一たび改革を断行し、善政を施く事になれば、これを魯の如き国情の国とするのは決して難事でない。また魯が更に一層奮起して先王の遺法を興し、法制を修め整えるに至れば、これを理想の邦家たらしむるのも難事で無いというのが、この章句の意義である。(参考:「実験論語処世談」渋沢栄一記念財団)

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 斉が一変すれば魯に至り、魯が一変すれば道に至るのが世の中における事物の推移変遷する順序で、斉から一足飛びに道に至るのは至難の業であり、これは普通一般の場合について言うことで、ある機運に遭遇すれば、必ずしも順序正しく一歩一歩進まずとも、一足飛びに斉から一変して直に道に至る場合も現出せぬとも限らないと栄一はいいます。

 101代内閣総理大臣に岸田氏が就任しました。これから本格始動ということでしょうか。まずは経済対策、次には1月のGoTo再開との話もあるようです。

 その頃には人手不足の問題なども解消されているのでしょうか。ものごとには順序があるような気がします。一足飛びもいいのでしょうけれども、この場合、飛んだ先はどうなるのでしょうか。