子曰わく、古者(いにしえ) 民に三疾(さんしつ)有り。今や或いは是(こ)れ亡きなり。古(いにしえ)の狂や肆(し)、今の狂や蕩。古の矜(きょう)や廉(れん)、今の矜や忿戻(ふんれい)。古の愚や直、今の愚や詐(さ)なるのみ。(「陽貨第十七」14)
(解説)
孔子の教え。「古代には、人々に三つの面倒があった。今はそれもなってしまった。昔の狂 一徹者は大筋を極めるところがあったが、今のそれは蕩、ただの追求屋でとりとめもない。昔の矜、自尊家は角があって孤高であったが、今のそれは忿戻、ただの八つ当たりだ。昔の愚 律儀者は心から愚直であったが、今のそれは詐、ただ見せかけだけの嘘つきだ」。(論語 加地伸行)
孔子の生きた時代から、「今の若者....」みたいなことをいう風習があったのだろうか。
過去、歴史を振り返れば、時代背景が語られ、偉業が語り継がれ、史実として残っていく。そこには多くの躓きもあったかもしれない。歴史に名を残すことはなかったが、その人たちがいたからこそ、偉人が生まれたのかもしれない。
今もまた同じのだろう。現代の偉業が認知されていなければ、「今の人たちは過去の偉人たちと違って」となるのかもしれない。得てして人の愚かな行為ばかりに目が向く。
孔子の言葉は偉人の資質を指し示してくれているのかもしれない。
大河ドラマ「青天を衝け」の主人公渋沢栄一は合本組織にこだわり、それを信念とし、現代の礎となる会社を次々と立ち上げた。現代にそんな人物はいるのだろうか。楽天の三木谷氏はまだ「蕩」、色々な事業に手を出すが無秩序にしか見えない。いずれその方向性も定まるのだろうか。
海外に目を転じれば、イーロンマスクの「狂」がEVシフトを加速させ、宇宙開発が前進する。ジェフベゾス氏の「矜」がECを発展させ、みなが利便性を感じるようになった。ティムクック氏の「愚」が環境問題解決への道筋を作り、新たなセキュリティの基礎を作ろうとしているのかもしれない。
偉人たちの素養や資質を学習し、身につけよということなのだろう。身近にそうした人物がいれば、その人をペースメーカーにして、学習を続けていけばいいのかもしれない。そんなことを孔子は示唆しているのだろう。
作家の江上剛氏がJIJI.COMに「平気でうそをつくリーダーたち だから電力自由化だって心配だ【怒れるガバナンス】」と投稿する。
私が心配しても、何かが変わることはないのだが、何が心配かと言えば、国のリーダーたちが平気でうそをつくことだ。 (出所:JIJI.COM)
古の愚や直、今の愚や詐(さ)なるのみ
政治家が単に素直であるべきかは別にして、噓をつくのは善くないだろう。
(参考文献)