子曰わく、鄙夫(ひふ)は与(とも)に君に事(つか)う可(べ)けんや。其の未だ之を得ざるに、之を得んことを患(うれ)え、既に之を得るや、之を失わんことを患う。苟(いやし)くも之を失わんことを患うれば、至らざる所無し。(「陽貨第十七」13)
(解説)
孔子の教え。「つまらぬ人間と一緒に主君に仕えることが出来るであろうかまだ下っ端のときに、出世できるかどうか心配し、地位を得ると、なんとかしてて失うまいと苦心する。失うまいとする限り、そのためにはどんなことでもするのだ」。(論語 加地伸行)
加地は「之」を地位として読む。分かりやすいが、地位にこだわらなくてもよいのかもしれない。
「事を先にして得ることを後にする」(「顔淵第十二」21)
得ることばかり考えれば、心卑しくなってしまう。
「位無きを患えず。立つ所以を患う。己を知る莫(な)きを患えず。知る可(べ)きを為さんことを求む」、「里仁第四」14にある。
地位がないと嘆かない。自分がその職に就いた理由を反省すると孔子はいう。
「子罕第九」8に登場する 鄙夫は誠実だったことで、孔子から色々な教えを得ることができたという。
約を以て之を失う者は、鮮(すく)なし。(「里仁第四」23)
「約(つま)しい」ということばがあるように、「約」にはひかえめにするという意味もある。何事においても、「節約」「倹約」、ひかえめにすれば失うことはない。
(参考文献)