子曰わく、由の瑟(しつ)、奚為(なんす)れぞ丘(きゅう)の門に於いてする、と。門人 子路を敬せず。子曰わく、由や堂に升(のぼ)れり。未だ室に入らず、と。(「先進第十一」15)
(解説)
「孔子がおっしゃった。「由君が瑟を弾じるのは、わが塾では無理であるぞ」と。門人たちは子路に敬意をはらわなくなった。すると孔子はこういう。「由君は、すでに堂に昇っている。まだ室に入っていないだけだ」と」(論語 加地伸行)
「瑟」は、琴の類で、25絃ある大楽器のこと。
「堂」は、儀式を行う政庁。南向きの部屋で、南に庭、さらに門がある。この部屋、庭、門において諸儀式が行われる。「室」は、堂の北側にある部屋のことで、家族で使うことが多く北堂という。
子路が正式な「堂」にはすでに昇っているものの、奥の「室」のこと、すなわち音楽の妙処にはまだ接していないという比喩と加地は解説する。
(参考文献)