「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【由や、女 六言六蔽を聞けるか】 Vol.450

 

子曰わく、由(ゆう)や、女(なんじ) 六言(りくげん)、六蔽(りくへい)を聞けるか、と。対(こた)えて曰わく、未(いま)だし、と。居(お)れ、吾 女に語(つ)げん。

仁を好みて学を好まざれば、其の蔽(へい)や愚。知を好みて学を好まざれば、其の蔽や蕩(とう)。信を好みて学を好まざれば、其の蔽や賊。直を好みて学を好まざれば、其の蔽や絞(こう)。勇を好みて学を好まざれば、其の蔽や乱。剛を好みて学を好まざれば、其の蔽や狂、と。(「陽貨第十七」7)

 

(解説)

孔子が言った。「由君よ、お前は六つの心得と六つの弊害とを学んだか」と。子路は「まだでございます」と答えた。「坐れ。お前に教えよう」。

「仁 愛することに熱中するだけで、どうあてはめるかを覚(さと)らないと、愚 その愛は当たっていない愚劣となる。知 事を明らかにすることに熱心になるだけで、そのしかたを覚らないと、蕩 議論倒れでとりとめもない。信 まごころを尽くすことにすがるだけで、その程度を覚らないと、賊 行きすぎてたがいに被害者となってしまう。直 まっすぐであることを第一として、その調整を覚らないと、絞 むやみに他者を非難するだけとなる。勇 勇敢であることだけを誇って、そこに大義があることを覚っていないと、乱 秩序を乱すだけとなる。剛 決心の堅さをうりものにするだけで、その本質を覚っていないと、狂 単に目的達成第一の独りよがりとなる」と論語 加地伸行

 

 学び得た優れた特性も、その使いかたを経験を通して知り得ないと、弊害もあるということであろうか。

 この言葉をなぜ孔子は九つ下の子路に投げかけたのだろうか。 

 

  

「由」とは「子路」のこと。もとは遊侠の徒で、孔子にからみに来て論破され、心服して門に入ったという。率直勇敢な情熱家で、孔子に愛されたという。

 「由は果」、果断、決断が立派であったという。大国の軍政のきりもりを任せられる人材といわれる。

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 その子路孔子の前では「行行如」、勇壮であったという。

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 子路は、孔子が聞かされた「詩経」「邶風(はいふう)」「雄雉(ゆうち)」にある「不忮不求 何用不臧」を一生口ずさむという。しかし、それを聞いた孔子は、この詩の言葉どおりにしているだけでは、「善」が成立したというわけにはいかないのだと、軽くたしなめたと、「子罕第九」27にある。 

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 「由や堂に升(のぼ)れり。未だ室に入らず」(「先進第十一」15)

 ここでは、子路が奏でる琴の一種の「瑟」が、「堂」には昇っているものの、奥の「室」、すなわち音楽の妙処にはまだ達していないと孔子は言った。

 もしかして、それは音楽だけではなかったのかもしれない。

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「中行(ちゅうこう)を得て之に与(くみ)せずんば、必ずや狂狷(きょうけん)か」(「子路第十三」21)、と孔子はいう。

 この「狂狷」とは子路のことであったのだろうか。

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫