「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

そうじゃない、映画「怪物」の問い

 

ジェンダー」「パーパス」「グローバル」、そんな言葉が一般化しつつあります。また「共創」や「パートナーシップ」などがビジネスの世界においては共通語になっているようです。そんな言葉の背後には、今の社会をより良い場所にしていくには、壁を無くして、人々がオープンにつながっていくということなのでしょうか。

 こうした活動が散見されるようになった一方で、現実社会はまだまだ課題を残していそうです。

映画「怪物」

 カンヌ映画祭で、坂元裕二氏が脚本賞を受賞した映画『怪物』がいよいよ明日から公開となるそうです。

是枝裕和監督「怪物はどこにでもいる。人と人が理解し合えないと思った時に現れる」 映画『怪物』 | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]

どこにでも怪物はいるし、ふとした時に立ち現れてしまう。人と人とが理解し合おうとした時、共有しようとした時、またはそれを諦めた時に出てくるものだと思って捉えていました。たまたま今回は子どもを持つ母親、学校という組織で描かれているだけで、生きている人それぞれの生活の場で感じられることだと思っています。(出所:朝日新聞デジタルマガジン)

(写真:PR Times ㈱KADOKAWA

 記事を読むだけで興味が沸きます。これが今の世の中ということでしょうか。

 

 

「作ること、撮っていることが楽しい」、それが是枝監督の映画製作を続ける理由といいます。また、もうひとつ、その対極にある憤り、「違う」「そうじゃない」という感覚があるといいます。

今回の作品もそうですよね。誰かを攻撃するような憤りではなくて、“問い”に近いのかな。なぜこうなってしまっているのか。“クエスチョン”ですね。(出所:朝日新聞デジタルマガジン)

 そんな是枝監督ですが、映画業界の労働環境改善などに取り組む活動を始めているそうです。「いい環境で自分の映画が作られる、関わったスタッフが笑って楽しそう。それを次の若い監督たちにも経験させたいんです。そのためには誰かが声を上げて、“今のままではだめだ”と口に出していかないと変わりません」と話しています。

 世の中に感じる憤りを映画を通じて問い、一方その制作現場では、関わるスタッフが楽しく働ける環境を作ろうとしている。こんな活動が一般企業においても広がっていけば、社会はより良い場所になっていくのかもしれません。

論語に学ぶ

子夏問うて曰わく、巧笑(こうしょう)倩(せん)たり、美目(びもく)盼(へん)たり。素以て絢(けん)を為すとは、何の謂いぞや、と。子曰わく、絵事(かいじ)は素を後にす、と。曰わく、礼は後か、と。子曰わく、予を起こす者は商なり。始めて与に詩を言う可(べ)きのみ、と。(「八佾第三」8)

 弟子の子夏が「詩に笑顔うるわし。眼元涼やか。白粉の美しさ。とあります。どういう意味でしょうか」と質問しました。孔子は「絵を描くときは、まずは色を使う。そのあと胡粉(白)を色の間は塗って完成するのだ」と答えます。子夏は「礼は後でよろしいのですか」と問います。孔子は「私の言わんとするところを表してくれるのは、商(子夏)君だ。お前となら詩を語り合える」と答えたといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 この場合の「色」は、教育とか政治ととり、胡粉(白)で縁どり際立たせる、それが礼、規範であるといい、「その後にする」とします。

 礼や規範、ルールはもちろん重要ではあるのですが、その末節にこだわるようになると何ごとも形骸化するだけで、何の意味もなくなるということでしょうか。

 

 

 変わりゆく社会に、さかんに制度やしくみ、ルールなどが頻繁に変更されるようになっています。しかし、それをきっかけにして理不尽さを感じたり、時に対立が生じたりもします。順序を違え、一定の枠に収めようとし、十分な話し合いもしないからなのかもしれません。

 一方で、世の中が変わっているのに、それに合わせようとしないことも顕在化しているようです。

同性婚訴訟、再び「違憲」 「立法裁量の範囲超える」―4件目判決・名古屋地裁:時事ドットコム

 世の流れを、公序良俗に従って問い、ルールを見直していく必要があるという司法判断なのでしょうか。政治の場でも、政党間対立ではなく、きちんと議論がなされて、みなが納得できるようなルール作りをしなければならないのでしょう。

「今のままではだめだ」、色々な場所で現状を問い、変えていけることができれば、世の中の雰囲気も変わり、より良き社会になっていくのかもしれません。

 

「参考文書」

同性婚認めないのは憲法違反 違憲判断は全国2件目 名古屋地裁 | NHK | LGBTQ

坂元裕二が紡いだセリフを完全収録。映画『怪物』の“決定稿”を掲載したシナリオブックが公開日より発売。一部上映劇場でも購入できる!|株式会社KADOKAWAのプレスリリース