「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

日本では「ありがとう」の声が聞こえない、なぜ豊田社長はそう嘆くのか

 

 自動車関連5団体が1月5日、東京都内のホテルで賀詞交歓会を開き、日本自動車工業会の会長を務めるトヨタ自動車社長の豊田章男氏のコメントが発表しました。

「毎年恒例ですが、年が明けると、春闘の話題が盛り上がってまいります」と豊田社長は切り出し、賃上げの議論では、「単年」の「ベア」ばかりが注目されているとしたうえで、「注目すべきは単年のベースアップではなく、分配の実績ではないか」と述べたそうです。

日本では「ありがとう」の声が聞こえてこない、自工会の豊田会長 | 日経クロステック(xTECH)

 ここ10年の自動車産業の賃上げ実績を説明し、全産業の平均を上回る2.2%の賃上げを続け、雇用を維持しただけでなく、新型コロナウイルス禍の2年間で22万人の雇用を増やした」と指摘、「平均年収を500万円と仮定すると、1兆1000億円を家計に回した計算になる」と言ったといいます。

「しかし日本では、私たちに対する『ありがとう』の声はほとんど聞こえてこない」と豊田氏は嘆いた。(出所:日経クロステック)

 

 

 さらにこう続けたそうです。「今日よりも明日を良くするために懸命に働く。その結果、成長し、分配して中間層を増やすことで(日本は)豊かになってきた」とし、「日本はこの強みを忘れたのではないか。忘れたのなら、思い出せばよいと考えている」と強調したといいます。

 誤謬を生むのかもしれません。働く人へのメッセージであれば、何と横柄な....と感じます。

「今年のチャンスを生かせなければ日本の未来はない」 自工会・豊田会長 新年あいさつ

 しかし、全体の文脈、前後の行間を読めば、日本政府やメディア報道への批判ではないかと感じます。

賢人の知恵

選挙演説で、相手の党をほめてもいいはずだ。

相手の党にいいところがあるなら「おっしゃることのこの点はいい。ぜひやってください」と言い、「しかし、我が党はこういう点で違った味もあり、おいしいですよ。さあおあがりなさい」と言うのである。相手をほめていいとこ取りをする方が、賢いやり方ではないだろうか。(出所:flier

 パナソニックグループ(旧松下電器)グループの創業者で経営の神様と言われた松下幸之助氏の言葉です。

 政治ばかりでなく、メディア報道もそうなのかもしれないと感じます。

「欠点を指摘するばかりでは、永遠によくならない」、「敵の考え方にもいいところはある」、これを上手に利用しないことは損であると幸之助さんはいいます。

 真意を読まずして、無用な対立を招くようなことをしていたなら、何ら得になることはありません。

 幸之助さんの根底には、「この世に存在するものは、すべて有用で、どの品物でもどういうことでも否定すべきではない」という考えがあり、PHP (Peace and Happiness through Prosperity)、「繁栄によって平和と幸福をもたらそう」という基本原則があるようです。

 

 

論語に学ぶ

斉(せい)一変すれば、魯に至らん。魯一変すれば、道に至らん。(「雍也第六」24)

 覇道第一の斉国がその態度を改めるならば、王道気分の魯国のようになれるだろう。その魯国も本気で改革するのであれば、王道となれるだろうと意味します。

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 武力による制覇を「覇道」といいます。それとは異なり、徳治による統治を「王道」といいます。

 孔子は「王道」を理想の政治論理としていたといいます。

 幸之助さんのPHPの精神は「王道」に通ずるものがあるのでしょうか。

素直な心は、あなたを強く正しく聡明にする。ものを見るのにたとえ自分に都合が悪いことでも、実相をつかまなければならない。だから、講師の話を聞いたり、自分で本を読んで考えたりする場合も、素直な心で判断することを心がけよう。(出所:flier

 見方を変えば、違う何かが見え、実相に近づくのかもしれません。執着がなければ、いいとこ取りができるようになるのかもしれません。

 

 

覇道か、王道か

 NHK大河ドラマ「どうする家康」が始まりました。王道を家康に説く今川義元が、「天下布武」覇道を唱える信長に早速飲み込まれてしまいました。

「王道」を問いながら「覇道」によって天下を目指したことが義元の敗因でしょうか。

 ロシアではプーチン大統領が自らをピョートル大帝になぞらえ、「覇道」に突き進んでいるように見えます。習主席の中国は共産党色が強まっているようです。覇道を歩むのか、それとも王道に従っていくのでしょうか。

 三国志諸葛亮孔明は自らを名宰相「管仲」になぞらえました。その管仲は富国強兵策をもって斉国の主君「桓公」を乱れた中原の覇者にしました。ただ武力によらず、平和裏に会盟を成立させたといいます。中国もまた、そうした先人たちの知恵を活かして同じ道を歩もうとするのでしょうか。

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 さて今の日本はどうなのでしょうか。防衛力増強を謳うようになり、いかがわしい大義を掲げては増税といい、国民を苦しめているようです。タモリさんは「新しい戦前」といいました。徳治とは言い難い状況になのかもしれません。

 豊田社長がそんな日本に警鐘を鳴らしているように思えてなりません。

 

「参考文書」

「なぜ日本人の給料が上がらないのか」について自工会の豊田章男会長がマスコミへ注文した内容がド正論だった… - 自動車情報誌「ベストカー」

「弱者踏みつける社会背景」 安倍氏銃撃半年で識者:時事ドットコム

リーダーになる人に知っておいてほしいこと | 本の要約サイト flier(フライヤー)