「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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【愚かな行為で、罪を天に獲る】大学を舞台にした背任と脱税 ~論語の教え #14

 

 大学や医療、スポーツを舞台にした背任行為や脱税などの話を聞くと、やるせなくなります。事実解明が進むと、逮捕者が増えたりするのでしょうか。

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「医者の不養生」という言葉があります。人に養生を勧めるべき医者が、自分は健康に注意しないことが転じて、正しいとわかっていながら自分では実行しないことのたとえといいます。わかっていながら悪事に手を染める人たちが、教育や医療の立場にあったりする弊は甚だ大きいのではないでしょうか。

 

 

罪を天に獲る

「無理な真似をしたり不自然の行為をすれば、必ず因果応報はその人の身の上に廻り来るもので、到底これを逃げるわけにゆくもので無い」と渋沢栄一が言っています。

 神仏に祈りを捧げたところで、無理や不自然な行動をすれば、必ず悪い結果が身の上に降り注ぐ。そうした行為によって自ら招いた応報であるから、何処へも持っていくところもないという事になる。これが「祈る所無し」といいます。 

「王孫賈(おうそんか)問うて曰わく、其の奥に媚びんよりは、寧ろ竈(そう)に媚びよは、何の謂いぞや、と。子曰わく、然らず。罪を天に獲(う)れば、禱る所無し」と、論語「八佾第三」13 にあります。

 栄一によると、王孫賈は、衛の大夫を勤めた権臣であったといいます。孔子が衛の国に仕えんとして来ると、「その奥に媚びるよりは寧ろ竈に媚びよとは何の謂ぞや」と孔子に問いかけ、君主たる霊公に取り入るよりは、権臣たる賈に賄賂でも贈る方が宜しかろうとの意を婉曲にほのめかしたといいます。

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 これに対し孔子は、権臣に媚びて旨く取り入っても、これがため、天命に反くような無理があっては、到底、再び世に起ち得られない人間になってしまうと言ったと解説します。

お天道様は見ている」もので、人間の悪事に対して、ほかの人間が誰も見ていなくてもお天道様はきちんと見ているのだから、どんな時でも悪事は働いてはならないということのでしょう。

 

 

論語の教え

「子貢(しこう) 友を問う。子曰わく、忠告して之を善道し、可(き)かれざれば則ち止(や)む。自ら辱(はずかし)めらるること毋(なか)れ」と、「顔淵第十二」23 にあります。

 友はと問う弟子の子貢に対し、孔子は、「友が過ちに陥らんとする場合に、これを忠告して善に導くようにしなければならない」と教え、「もし、朋友がその忠告を用いなかったならば、親兄弟などとその親しみに違いがあるのだから、忠告を再びするものでない。そうすれば、辱を受けることもない」と云うことを教えたと栄一は解説します。

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 ついつい誘惑に負けて、悪事に手を染めてしまうことを避けるために、こうした言葉があるのかもしれません。

 著名な投資家で、大富豪のウォーレン・バフェットは「金をもって何が悪い。自分の力で稼いだものだ」といい、「たしかに私には才能があるのかもしれないが、ただそれだけはない」といったそうです。そして、「株で莫大な報酬を得られるところに運よくいれた」、「だから当然、社会にも分け前を受け取る権利がある」と述べたそうです。

 そのウォーレンは、とある財団に370億ドル近い資産を生前寄付しているそうで、社会に何かを還元したいと切に願った行為と言われています。

 そんな膨大な資産をもつウォーレンですが、財産は子どもには残さない主義で、教育と医療にかかる費用だけ面倒をみていたそうです。家と車は買ってやったけど、「後は独力でやってもらう」といい、「子供に10億ドルやっとして、どうなると思う。働くことも、考えることもしなくなるさ。そんなことをしたら子どもたちは駄目になる」と述べたそうです(参考:「なぜ真のリーダーがいないのか」ダイヤモンド社)。

 どんなにお金を集めたところで、そのお金を墓場にはもっていけないといいます。私には理解し難いですが、ウォーレンのような富豪たちはお金の使い方に苦労しているようです。不正に蓄財したところで、何も意味はないということでもあるのでしょう。 

 

「参考文献」