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【利に放りて行えば、怨み多し】楽天の送料無料問題、不平を漏らす出店者

 

 楽天市場の送料無料問題が再燃しているようです。

 産経新聞によると、楽天は5月10日、出店者が出店プランを変更する場合は送料無料の導入を義務化するように約款を変更したといいいます。出店プランを変更すれば、送料無料制度に参加せざるを得なくなるそうです。

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 このことを、楽天は出店者に事前告知しなかったようです。楽天ユニオンは独占禁止法民法に抵触する懸念を指摘しているといいます。

 反発を受けて、楽天は義務化を一旦凍結し告知期間を設けた上で、7月1日に再開する方針だそうです。ただ、楽天ユニオンは「告知期間が短く、状況は改善していない」としているといいます。

五美を尊び、四悪を屏(のぞ)けば、斯ち以て政に従うべし」(「堯曰第二十」2)という言葉があります。

 この「四悪」を孔子はこう説明します。

 

教えずして殺す、之を虐(ぎゃく)と謂う。戒めずして成るを視る、之を暴と謂う。令を慢(ゆるが)せにして期を致す、之を賊と謂う。猶(なお)之れ人に与うるとき、出納の吝(やぶさか)なる、之を有司と謂う。 

「教育をしないで死刑にする、これを虐という。あらかじめ注意を与えないでおいて、よくできたかどうかを検査する、これを暴という。連絡をきちんとしないでおいて、期日どおりでないとして罰する、これを賊という。当然に民に与えるべきものをあれこれ出し惜しみする。これを有司 役人根性という」

 産経新聞が報じた内容からすると、楽天が「」に思えてしまいました。

 

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「民の利する所に因りて、之を利す。斯れ亦(また)恵にして費やさざるにあらずや。労す可きを択(えら)んで之を労せば、又誰をか怨みん」と、この章の前段は「五美」について述べられています。

人々が自分からこれは得だと望むものを得させるようにする。これが、適切な給与をし、ばらまきはしないということでないであろうか。同じく人々が必要と思う労働を択んでの動員であれば、人々は誰を恨むであろうか。

 楽天にとっては、消費者も出店者のどちらも顧客なのではないでしょうか。みなが納得し、みなが得するようにすれば、誰も恨みはしないし、協力もあるのでしょう。

「仁を欲して仁を得たり。又焉(いずく)んぞ貪らん」。

 「仁」 人の道を求めて、「仁」 人の道に至る。どうして貪欲、欲張りということになろうか。

  そもそも「送料」は無料でなく有料です。物流に携わる人たちがただ働きをしているわけでもなく、誰かがその費用を負担しなければなりません。

 

 

 楽天市場の「送料無料」制度自体に無理があるように感じてしまいます。

 一見、消費者にとってうれしいことと感じてしまいますが、どこかで「搾取」が 起こり、公平感が失われます。楽天がこだわる理由は何なのでしょうか。

利に放(よ)りて行えば、怨み多し」といいます(「里仁第四」12)。

  利益を欲しいままにしようとすれば、他者から怨まれることが多くなるということでしょうか。  

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 「利」とは元来、公益、公利、国家、社会のためであって、私利私欲ではないと、「利は義の和なり」と「易」文言伝にあり、この教えの「利」は私利私欲を意味し、それを批判しているといいます。

 

 

 

 「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」といいます(「為政第二」13)。

 先ず実行し、その説明はその後にする、との意味です。 

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 要求する方が、こうすればできるという実例を示すべきなのでしょう。または、それを実現するサービスを提供することもいいことなのかもしれません。

 いずれにせよ、「搾取」を強要すると受け取られる行為は避けるべきなのでしょう。

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「君子は衆寡(しゅうか)と無く、小大と無く、敢えて慢(あなど)る無し。斯れ亦泰にして驕らざるにあらずや。君子は其の衣冠を正し、其の瞻視(せんし)を尊び、儼然(げんぜん)たれば、人望んで之を畏(おそ)る。斯れ亦威ありて猛からざるにあらずや」といいます(「堯曰第二十」2)

「君子 教養人は、多少にかかわらず、大小にかかわらず、相手を侮ることはしない。これがゆったりと構えているが傲慢ではないということではないであろうか。君子 教養人は、きちんとした服装で、まっすぐに視る。そこには威厳はあっても、野卑な猛々しさはないので、人々は歓迎し、また畏敬の念を持つ」との意味です。

  楽天ほどの大きな企業であるなら、ここでいう君子のように振舞って欲しいものです。

 

「参考文献」