子曰わく、賢者は世を辟(さ)け、其の次は地を避け、其の次は色を避け、其の次は言を避く、と。子曰わく、作(た)つ者七人、と。(「憲問第十四」37)
(解説)
孔子の教え。「賢人は乱世を避けて山村に隠れる。その次は、乱れた地を去り、納まった国へ行く。その次は主君の乱れた顔色を見ることをやめ、他国へ行く。その次は、悪しき言葉、主張を聞けば、去って他国へ行く」、と。また、孔子はこうも言った。「そういうことをができる者は七人いる」と。(論語 加地伸行)
孔子がいう賢人7人には諸説あるという。
「述而第七」14で、子貢が孔子に、「伯夷(はくい)、叔斉(しゅくせい)は何人なるや」と聞き、孔子は「古(いにしえ)の賢人なり」と答える。
その伯夷、叔斉は、周国の君主が殷王を倒そうとしたとき、それは下克上になるとして反対したが、君主はそれを押し切って兵を進め、殷王朝を倒して周王朝を建てた。その君主が、周王朝の武王である。伯夷、叔斉は、王を倒し逆賊となった周国の作物を食べることを拒否して、首陽山に逃れ、その山中に籠り、山菜を食べて生活したが餓死した。
その伯夷、叔斉の兄弟は、かつて残念だと思ったことをいつまでも想い出したりなどはせず、昔の知り人に対しても恨むことが少なかったという。
またこの賢人7人は、「微子第十八」8で示されるる「伯夷、叔斉、虞仲、夷逸、朱張、柳下恵、少連」とする説もあるという。
賢者は世を辟け、其の次は地を避け、其の次は色を避け、其の次は言を避く。
国や組織のトップに立つ人たちが、悪しき言葉、主張をする事例がここ最近は絶えない。
五輪組織委員会の会長は女性蔑視発言をし、それを一部たち政治家が擁護する。多くの人たちが一斉に声をあげ非難する。国の乱れの始まりなのかもしれない。
先の米国でも大統領が悪しき主張を繰り返した結果、国が乱れた。安倍政権のときもそうだったような気がする。国会答弁が罵詈雑言に満ちていた。政治不信が加速し、己のみの利に走る者ばかりが増えたのかもしれない。
少しばかり心配になる。賢人たちはこうしたことに巻き込まれないようと国を去っていくということなのだろうか。
「関連文書」
(参考文献)