「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【子は怪、力、乱、神を語らず】 Vol.170

 

子は怪、力、乱、神を語らず。(「述而第七」20)

  

(解説)

孔子は、怪力や乱神についてはお話にならなかった。」論語 加地伸行

    

  加地は、怪力(神秘的な力)、乱神(あやしげな神)との二者とするが、桑原は、怪、力、乱、神と四つの事とするのが普通であるという。

  「怪」は怪異。「力」は信じられないような体力。「乱」とは臣が君を、子が父を殺すといった秩序の破壊。「神」とは鬼神のこと。

 孔子は、そういうことを口にすることを好まなかったという。この世にあってはならない非合理的なことだからだという。孔子の健康な合理主義の表明だとされる。

 しかし、この章を文字通りに信じると、「易」や「中庸」などの古典にのった孔子の言葉をされるものの内に、怪、力、乱、神に関するものがあることをどう解すればよいのかと疑問を呈し、仁斎の、それは、後世の付会だとするほかはないという。

 

 

 単純合理主義否定の方向をとる徂徠は、巧妙な解決案を示しているという。

 すなわち「語」という言葉は、孔子の時代では、「誨言」すなわち教え諭すという意味である。孔子は、怪、力、乱、神のことを教材にしなかった、というだけのことであって、日常の談話においては、聖人といえども普通人と変りのあろうはずはなく、お化けの話もされたに違いない、というのである。

 

 なるほど、そうほうが「論語」をより身近に感じられていいかもしれない。

   

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫