「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【千乗の国を道く】 組織の三菱 Vol.10

 

子曰く、千乗の国を道(みちび)くには、事を敬して信、用を節して人を愛し、民を使うには時を以てす。 (「学而第一」5)

  

(意味)

「大国の政治を担当するには、次のようなことが必要だ。事務上のことは丁寧に扱って人民を欺くことなく、公の金品は節約を心がけて、人々の心や生活を豊かにし、人民の労役を提供させるときは、農閑期にするように心がける。」 論語 加地伸行

 

 政治における要諦、このような言葉があるということは遠い昔も、国の政治に問題があったことが容易に想像できる。いつの時代でも同じなのかと思う反面、2000年の時が経過してもあまり政治には進歩がないのかとも思えてしまう。

 

企業経営もまたしかり。常に顧客ファーストであって、プロダクトインに陥ることは避けなければならない。このことばを理念として、また原則とした経営が求められる。

 

 

この論語のことばを聞いて思いだすのは前垂をしていた頃の岩崎弥太郎の姿。

 明治になり、現在の三菱の礎を築いたのは二代目の岩崎弥之助。弥之助は、世論の反発を受けないように気を使っていたとのこと。兄弥太郎の時代に、政府の攻撃を受け、世論の激しい非難が三菱を崩壊の危機に追い込んでいったことを経験していた。  

 

 小弥太の代になると、小弥太はこんな言葉を残している。

多くの人は一時の功名心に駆られて急遽の成功を求めた。

それ故、事業界では権略を弄し、詭計を用いる巧みな者が往々として称賛せらるるが、国家の前途を思えば、誠に寒心に堪えない。 

(出所:岩崎弥太郎と三菱四代)

●●●

 逆説的だが、論語のことばにも通じるものがあるように思う。 

 そういえば、『組織の三菱、人の三井、結束の住友』という。

 三菱には論語のように累々と語り継がれる組織の要諦、理念なるものがあるのかもしれない。

岩崎弥太郎と三菱四代 (幻冬舎新書)

岩崎弥太郎と三菱四代 (幻冬舎新書)

 

 

  余談だが、私は住友系の電機メーカに勤めていた。何か困ったことがあると必ず住友商事に相談しろと言われていた。夏の納涼祭にはアサヒビールが来て挨拶をしていた。生命保険はいまでも住友生命住友商事のメンバーとはよく我ら井桁の仲間と言っていた。確かに結束の住友かもしれない。

 

f:id:dsupplying:20190923163601j:plain

  

(参考文献)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)