対話型AI ChatGPTの米オープンAIが今月、東京オフィスを開設し、日本語サービスの強化を進めるそうです。進出の理由は何なのでしょうか。
オープンAI、東京にアジア初の拠点を開設し日本語対応強化-関係者 - Bloomberg
ブームが到来し、デジタル後進国にそれなりのメリットを見出せたのか、それとも日本政府の後押しがあってのことなのでしょうか。アルトマンCEOは昨年4月に来日、首相と面談していたことを思い出します。
デジタル赤字が続く昨今、経済安全保障にかかわる次世代重要インフラをまた米企業に頼らざるを得ないことになってしまうのでしょうか。
NTTやNEC、ソフトバンクなど国内企業も日本語に特化したAIの開発を進めていますが、この進出を脅威として受け止めるのでしょうか。日本におけるネット勃興期と同じことがまた起きてしまいそうな気もします。ソフトバンクや楽天などかつての国内新興企業が奮起、オープンAIを凌駕するようなイノベーションを生み出してもらいたいものです。
しかし、そうはなりそうにもないのが現実のかもしれません。ソフトバンク傘下のLINEヤフーでは情報漏洩が相次ぎ、総務省から行政指導を受ける始末です。ずさんな管理体制で、重要インフラを担う事業者としての自覚の欠如が指摘されています。
LINEヤフー、インフラ担う自覚欠如 情報漏洩相次ぎ行政指導:日経ビジネス電子版
利用者の信頼を大きく損なう結果となったものであり、当省としては極めて遺憾である。(出所:日経ビジネス)
「信頼」、ビジネスにおける基本中の基本ですが、それを失しているとみられてしまったのでしょうか。それでは次世代インフラを任せるとの気にはなれないのかもしれません。
一方の楽天はグループのフィンテック事業再編に向けて協議を開始するそうです。携帯事業に躓き、会社の再建に注力せざるを得ないのでしょうか。「シナジーは確実にある」、収益力を向上させグループの財務を改善し、携帯電話事業の成長につなげるといいます。なかなか業績改善が進みません。
楽天グループ、金融事業再編で協議開始 楽天銀行の上場は維持 - 日本経済新聞
楽天Gは70以上のサービスを展開する。楽天ポイントを軸に「経済圏」を広げ、利用者に自社サービスの回遊を促してきた。(出所:日本経済新聞)
縮小する国内市場に執着し、ポイント経済圏の囲い込み拡大のため、数字ばかりを追いかける苛烈なプロモーション競争ではいつまで続くのでしょうか。そうではなく新たなテクノロジー開発、ビジネス開発で日本のイノベーションを先導して欲しいものです。
センスの悪い国で精密なマーケティングをやればセンスの悪い商品が作られ、その国ではよく売れる。センスのいい国でマーケティングを行えば、センスのいい商品が作られ、その国ではよく売れる。商品の流通がグローバルにならなければこれで問題はないが、センスの悪い国にセンスのいい国の商品が入ってきた場合、センスの悪い国の人々は入ってきた商品に触発されて目覚め、よそから来た商品に欲望を抱くだろう。しかしこの逆は起こらない。ここに大局を見るてがかりがあると僕は思う。
その企業が対象としている市場の欲望の水準をいかに高水準に保つかということを意識し、ここに戦略を持たないと、グローバルに見てその企業の商品が優位に展開することはない。(引用:「美意識をアップデートする側に回るか、アップデートに引きずられる側に回るか?」山口周)
その楽天グループで入社式が開かれ、三木谷社長が「世界の変化は驚くほど速い。我々も新しい事業に次々と取り組んでいるが、過去の地位にしがみついていては遅かれ早かれ滅亡する」と強調し、挑戦することの重要性を説いたそうです。
「過去の地位にしがみついていたら滅亡」 楽天入社式で三木谷社長 | 毎日新聞
インターネットの普及とともに、モバイルなどにも事業領域を拡大してきたことも紹介したそうです。
式に参加した新卒採用の社員は343名、国籍別では、約4分の1に当たる90名が日本以外の国の出身だったといいます。ダイバーシティ、多様性の利点を活かしてい切れていないとも感じたりします。
論語に学ぶ
学は及ばざるが如くせよ。猶(なお)之を失わんことを恐れよ。(「泰伯第八」17)
勉強、学びをするには、逃げる者をつかまえようとするときのように、一瞬の油断もなく努めなければならないが、それでもまだつかまえきれないことを恐れる、学ぶ者の態度はこうでなければならないと、孔子はいいました。
「光陰矢の如し」、歳月は人を待たず、一瞬の光陰も軽んじられてはならないと孔子は言わんとしているのではないかといいます。
追いかけるばかりでなく、追いかけられるようになりたいものです。追いかけることさえ諦めるようになると、それまでに得たものの失いかねないような気もします。
進むのは防衛力強化
政府が防衛力強化のため、普段は民間用として使われている空港や港湾などのインフラ施設を、有事に自衛隊や海上保安庁が使用するのを前提に改修し、訓練や物資輸送をしやすくすることを閣議決定したそうです。
安保インフラ、南西対処に重点 政府が16空港・港湾整備 - 日本経済新聞
首相の訪米前に決めておきたかったのでしょうか。防衛力整備を否定する気はありませんが、どうなのでしょうか。建設業界は人手不足が深刻といわれています。社会課題にあげられている老朽化するインフラの再整備にも影響しそうな気がします。
日本にいま必要なのは、まちがいを認めて改めるという「訂正する力」といいます。「政治家は謝らず、官僚はまちがいを認めない」、「政治は変わらず経済も沈んだまま」。改革が必要とされますが、何も進展してはいないといいます。
一度決定された計画は変更させることもない、日本には「変化=訂正を嫌う文化」があるそうです。その上、異なる立場の人たちが対話によって少しずつ意見を変えていくこともできず、政治的な議論が成立しなくなっているといいます。
これでは停滞してあたり前、新しいものが生まれることはなさそうです。
「参考文書」
美意識をアップデートする側に回るか、アップデートに引きずられる側に回るか?|山口周