「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

異次元緩和の10年、公開となった導入決定時の議事録

 日本銀行が、2013年1-6月の金融政策決定会合の議事録を公表しました。

 当時は、12年12月の衆院選自民党が大勝し、政権を奪還した安倍首相の下、政府と日銀が共同声明を発表し、2%の物価安定目標を導入、目標の早期実現を目指すことになった時期のことです。

黒田バズーカ発動、実験・ギャンブルの指摘も-13年上期・日銀議事録 - Bloomberg

 13年3月に黒田氏が総裁に就任し、黒田バズーカ 異次元緩和がスタートしました。

 この政策を導入するときの議事録で、それには、佐藤健裕審議委員が、期待に働き掛ける政策について「効くか効かないか、いずれにせよギャンブル性の強い政策となることは覚悟すべきだ」と指摘し、白井委員が「実験的な面があるとは思う」と発言したという記録が残っていたそうです。

 

 

 未だに賛否が分かれていますが、日本の現状からこの政策を分析して、次に向け活かしていくべきなのでしょう。

硬直した政策

 当時、審議委員を務めていた木内登英氏(野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)は、「異次元緩和」導入を決めた2013年4月4日の金融政策決定会合を振り返り、「異次元緩和をやらない方が良かった」と語っています。

異次元の10年:異次元緩和「こんなことなら、始めない方がよかった」 木内登英氏 | 毎日新聞

13年1月の政府と日銀の共同声明では、2%の物価安定目標は企業や政府も含めみんなで目指す位置づけでした。黒田東彦前総裁のもとで2%目標を2年で達成すると強く打ち出したことで、2%目標が「金融政策のみで達成する短期目標」に意味づけが変わってしまいました。(出所:毎日新聞

「結果として2%を達成したかどうか判断してからでないと政策を動かせない硬直的な状態に陥り、効果があるか分からないまま10年続いてしまいました」とも語っています。

 

 

ムダな政策

 経団連会長として2期目に入った十倉会長が、2期目は格差問題に目を向け、成長と分配の好循環を創出すべく行動すると語り、「分厚い中間層」の再構築こそ、日本経済に欠かせないといいます。

経団連の十倉会長、格差問題に切り込み、分厚い中間層を再構築する:日経ビジネス電子版

規制緩和だけでは解決しません。今、若い働き手の給料が300万円台になっていますが、昔は500万円台。元に戻さねばなりません。(出所:日経ビジネス

 そのためには、マクロ経済改革、社会保障・税制改革、労働改革の3つを総合的に実施する必要があるといいます。これまでは、国が推進する政策に対し、企業があまり応えられなかったともいいます。

 政府や日銀が、経済を活性化させようとした政策がムダだったということなのでしょうか。企業の実情を適正に把握せずに思惑だけで走ってしまったとも聞こえます。もっと異なるアプローチをたどれば、異なる結果になっていたということなのかもしれません。

論語に学ぶ

子貢(しこう)曰わく、君子の過ちや、日月の食(みちかけ)の如し。過つや人皆之を見る。更(あらた)むるや、人皆之を仰ぐ。(「子張第十九」21)

 君子 教養人は過ちは、日食や月食の姿のようにはっきりしており、隠したりしない。過てば人々はみなそれを知っている。しかし、すぐに改めるので、人々はかえって尊敬すると意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 人が過ちを犯すことは避け得ないことですが、それでも素直に過ちを認めてそれを改心できれば、人々の信用を得ることはできるということなのでしょう。

 

 

 日銀は総裁が交代し、植田体制となりました。先日の金融政策決定会合では、黒田総裁が残したYCC イールドカーブコントロール(長短金利操作)政策の柔軟化措置を決定し、複雑化した緩和策を修正する作業に着手しました。

 経団連もこれまでの非を認めて、改革の必要性を訴えています。社会的責任を自覚したのでしょうか。

 さて国はどうなのでしょうか。ここだけが過去を顧みることなく、相変わらずフラフラするばかりで、信用の回復に努めようとしないようです。これでは良くなるはずもありません。

 ものごとは連続しているものです。流れを変えれば、それに従い流れてゆき、何も変えなければ、これまで通りのままに流れてゆくのですから。