「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【異次元政策の評価】日銀の金融政策は変わる、それとも変わらないのか

 

 社会が常に一定であることがないのでしょう。技術は進歩を続け、ChatGPTのような対話式AIも登場するようになりました。それが新たな起点となってまた進歩が続くのかもしれません。

 また人々の嗜好や流行も変化し続けています。変化を続ける社会に対応するかのように様々な学説が誕生しては、時代にそぐわなくなれば、それもまた廃れていきます。

 長いデフレに陥った日本において、MMT「現代通貨理論」が注目されたのもわかるような気がします。自民党内などで支持を集め、未だにそれを信奉する人たちもいるようです。

 

 

次期日銀総裁はどんな人物か

 日銀総裁が4月には交代となり、その後継候補に経済学者の植田氏の名が挙がっています。「黒田総裁の路線を継承する人物だ」と岸田首相は語っているといいます。

緩和路線「継続」見方広がる 植田氏起用、事前予想なく―政府・与党:時事ドットコム

安倍政権が進めた経済政策「アベノミクス」を急激に修正すれば、自民党保守派を刺激しかねないだけに、「路線継続」をアピールする狙いがあるとみられる。(出所:JIJI.com)

 それに反応するかのように、安倍派幹部も「政策は維持されるのではないか」と評価しているといいます。

 一方で、その真逆の見方をする専門家もいます。

植田氏の場合には、伝統的な日本銀行の考え方に近く、黒田路線は修正されていく流れとなるだろう。(出所:野村総合研究所

日銀新総裁に植田和男氏起用との報道 | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 記事は、植田氏は日本銀行との関係が極めて強いことから、実質的には日本銀行から選ばれたようなものだろうと指摘し、黒田路線は修正され、金融政策の柔軟化、正常化が進むだろうが、金融市場や金融機関への悪影響に配慮して、事務方と一体となって慎重に進められる可能性が高いといいます。

 また、岸田政権が黒田総裁とは距離を置く植田氏を総裁にするのであれば、それは黒田政策の修正を意図したものと言えるだろうといいます。

 さて、首相の本意はどちらなのでしょうか。

 

 

優先課題

 この専門家は、新総裁のもとで日本銀行が取り組む優先課題の一つは、過去10年にわたる異例の金融緩和が財政の規律を緩めるという弊害を生じさせてきたことへの対応だろうといいます。

日銀新体制の課題②:財政規律低下への対応 | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

財政規律が低下したもとで政府債務の増加が続くと、それは将来世代の需要をかなり前借りする効果を生じさせる。その分、将来世代の需要が低下するとの見方から中長期の成長期待が低下し、企業は投資、雇用、賃金を抑制してしまう。それによって、経済の潜在力が損なわれてしまうのである。(出所:野村総合研究所

 財政規律の低下が金融緩和の効果を削ぎ、経済の潜在力の向上、物価、賃金の上昇率の引き上げをむしろ妨げるという皮肉な結果を生んでいたと指揮します。

 人事の変わり目が、それまでの学説を見直すタイミングなのかもしれません。より良くしようとした試みも結果が伴わなければ、失敗なのでしょう。それを失敗と認めることができれば、そこから次の改善がスタートしていきます。

 

 

論語に学ぶ

学びて思わざれば、則ち罔(くら)し。思いて学ばれば、則ち殆(まど)う。(「為政第二」15)

 知識や情報をたくさん得ても思考しなければ、どうして生かせばいいのか分からない。逆に、思考するばかりで知識や情報がなければ一方的になり、独善的になってしまうとと意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 学習に求められる態度を孔子が諭しています。

 ある学説に従ってみたものの、思い描く効果が得られなければ、それはなぜだろうと思考するものです。あれこれ悩んだ挙句、また学習して思考する。それを続け、その中でこれぞ善きものと思うものを選びとり、改善につなげていく、そんな態度が求められているのかもしれません。

 

 

 ファーストリテイリングの柳井社長の著書にこうあります。

日々の一歩一歩、あるいは一進一退の悪戦苦闘の連続こそが、将来の姿につながっていく。将来を決めるのは現実・現在の自らの行動である。(引用:「成功は一日で捨て去れ」柳井正

 孔子の言葉にも通ずるのかもしれません。

店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる

と、柳井氏はいっています。

 リーダーの役割を考えさせられる言葉です。リーダー次第では、国が滅びないこともないのかもしれません。