現下の国際情勢からすれば、ロシアで反乱を起こしたプリゴジン氏に関心が集まるのはわからないことではないですが、一方で、これが物議となり論争も起こります。これも人となりと思ったりします。一刻も早く紛争を解決と願いつつ、この状況を見ていると、この先もなるようにしかなっていかないと思ったりもします。
「己が分を知りて、及ばざる時は速かに止むを、智といふべし。 許さざらんは、人の誤りなり。 分を知らずして強ひて励むは、己れが誤りなり」、吉田兼好の徒然草の一節です。
分をわきまえた人によって導かれるのなら、こうした事態を避け得ることができるのでしょうが、そうならない現実が残念でなりません。人の痛みというものを知らないのでしょうか。
しかし、世には様々な人が存在するものです。「熱烈中華食堂 日高屋」を展開する飲食チェーン大手のハイデイ日高の創業者で、代表取締役会長を務める神田正氏が、自身の保有している自社株式の一部である約20万株 約4億3000万円分相当を従業員に無償で贈与するといいます。対象者は役員や正社員だけでなく、条件を満たしたパート・アルバイト従業員も含まれ、早ければ今年7月にも贈与するそうです。
日高屋82歳会長が語る、“4億3000万円分”自社株譲渡の真意「人が唯一の財産。成長したら分配したい」 | 日刊SPA!
見ず知らずの人に寄付したりするよりも一緒に作り上げてくれた人に渡すのが筋かなと。日々、重い中華鍋を振って頑張ってくれているんだから、利益がでたら返すのは当たり前のことだと思います。(出所: 日刊SPA!)
かつては私利私欲もあったと明かす神田会長、しかし、今まではそれとは別な動機が原動力になっているといいます。
「従業員全員に幸せな人生を送ってもらうこと」、
「出店した地域の人に心から喜んでもらうこと」、
「契約する業者に取引できてよかったと思ってもらうこと」、
「株を買ってよかったと言ってもらうこと」。
経験を重ねて見えてくるものがあるのでしょうか。
「私欲がないって、こんな強いことはないですよ」と神田会長は語り、「人生のなかで今が一番燃えている」といって「本当の商売はこれから」といいます。
こうした考えが拡がり、同じ様に経営される会社が増えれば、不況知らずとなり、持続的で安定的な社会に近づいていきそうな気がします。しかし、邪まな考えを持つの人が多いから、世の中は長く停滞を続けたり、諍いが絶えないのでしょう。
商品は安いまま、同じ外食チェーンの8~10%アップの給料を払える会社を目指しています。工場で大量生産しているから安く作るところはクリアしているけれど、現在の課題はホールに人件費がかかりすぎている点。そこを抑えていけば今働いてる人にもっと給与を分配できると思うんです。(出所: 日刊SPA!)
「街が明るくなった」「治安も良くなった」「町が元気になった」、そう言ってもらえると嬉しいと神田会長はいいます。「2~3時間働く場所ができてよかった」、地域の雇用促進にも貢献できると嬉しいともいいます。
また、次世代の経営陣には、「お金儲けじゃダメ。私が退いたあとも、従業員・取引先・出店先・お客さん全ての人に日高屋があってよかったと思ってもらいたい、そういう理念のもとでチェーン展開をしてほしい」と語っています。
論語に学ぶ
不仁者は以て久しく約に処(お)らしむ可(べ)からず。以て長く楽に処らしむ可からず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利す。(「里仁第四」2)
仁を知らざる者は貧困の境遇に耐えきれないから貧しい生活を長くさせてはならない。きっと不義の行いに走る。また豊かな生活を長くさせてはならない。自制心を失って、きっと驕り高ぶる。仁者は、境遇に左右されず、自分の境地に満足して生きることができ、知ある者は己の境地の価値を社会に活かすと意味します。dsupplying.hatenadiary.jp
この世をながめてみれば、私欲が満ち溢れているように思えてなりません。その私欲は強力な動機にもなるのだから、完全否定できるものではありません。しかし、それをコントロールできていないのが今の世なのでしょう。
難しい時代なのでしょう。こうした状況にあるのですから。しかし、中には心ある人もいるようです。どちらに与するのか、それでその先が大きく変わることになりそうです。
「参考文書」
【山口周】人生の豊かさは「逃げる」巧拙に左右される | ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式 | ダイヤモンド・オンライン