「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

官庁や自治体で利用始まるChatGPT、国際ルール作りを主導したい政府の思惑

 

 生成系AI「ChatGPT」の利用が官庁や地方自治体も始まるようです。

 農林水産省は運用する電子申請システムの利用マニュアル改定などに活用する計画で、早ければ2023年4月中にも利用を始めるそうです。この他にもユースケース作りや適切な利用方法の検討を進めていくといいます。

自治体初、横須賀市

 また地方自治体では横須賀市が先陣を切って使い始めています。

 横須賀市の上地市長が市役所での部長会議で「秘書がもう1人増えたと考えてほしい。業務を効率化して、人と向きあう仕事を最優先にしてほしい」と期待を込め述べたといいます。

全国初、ChatGPTを横須賀市が試験導入 広報文作成や議事録要約に活用 「秘書が増えたと考えて」:東京新聞 TOKYO Web

チャットGPTは、市の広報文の作成や会議の議事録要約のほか、新規事業のアイデア創出などに活用する。市役所内で作成する文書は年間約9万件に上っており、チャットGPTの導入で文書作成の時間が短縮され、職員の負担が軽減されるという。(出所:東京新聞

 横須賀市が発表したニュースリリース自治体初!横須賀市役所でChatGPTの全庁的な活用実証を開始」はChatGPTが下案を作成し、職員が校正を行ったそうです。これがこれからの仕事のカタチになるのでしょうか。

 市民が懸念する個人情報の流出には、個人情報や機密性の高い情報は入力しないよう職員に周知し、また入力した内容は、ChatGPTに学習されない仕組みとし、配慮しているといいます。それぞれで工夫を凝らし、その活かし方を模索し始めたというところでしょうか。

国際ルール作り

 一方、政府は、「CharGPT」を含む「生成系AI」について、G7広島サミットの議題にあげ、国際ルール形成を主導していくそうです。また、国内での開発と利用も促進するため、関係閣僚会議を設置する案も浮上しているといいます。

岸田首相、AIの国際ルール形成主導 開発・利用・規制3本柱―サミット議題、閣僚会議も:時事ドットコム

 首相は国際的なルール形成に意欲を示しているといいます。米中両国が技術開発で先行し、日本が新たな「産業革命」の波に乗り遅れかねないとの危機感を抱いているそうです。

首相は中国を念頭に「チャットGPTと同じような技術が出てくるかもしれない」と警戒しているという。(出所:JIJI.com)

 国として国際的なルール形成に積極的になることはよいにしても、動機不純で、それが見え見えになると、まとまる話もまとまらなくなりそうな気がします。それがまた日本にとっても害あることになりそうです。

論語に学ぶ

子貢(しこう)曰わく、君子も亦(また)悪(にく)むこと有るか、と。子曰わく、悪むこと有り。人の悪を称する者を悪む。下流に居(お)りて上(かみ)を訕(そし)る者を悪 む。勇にして礼無き者を悪む。果敢にして窒(ふさが)る者を悪む、と。曰わく、賜(し)や、亦悪むこと有り。徼(もと)めて以て知と為す者を悪む。不孫(ふそん)にして以て勇と為す者を悪む。訐(あば)きて以て直(ちょく)と為す者を悪む、と。(「陽貨第十七」21)

 弟子の子貢が「君子 教養人もまた人を憎むことがあるのか」と質問します。孔子は「憎むことがある。他人の悪を言いたてる者、下でありながら上を誹る者、勇気はあるが礼儀をわきまえない者、自己主張が強すぎる者を憎む」と答えます。また「賜君よ、憎むことがある。他者の意見を盗みとって自分の独創とする者、自分の傲慢な行動を勇敢と思っている者、他者の秘密を暴露して正直としている者、こういう連中をな」とも答えます。

dsupplying.hatenadiary.jp

「君子」教養人は好悪の情を鍛えるからこそ、その善し悪しを判断できると子貢に教えようとしたようです。それが君子にとっての美徳であり、素養であるとも言いたかったのでしょう。

国家のため、国益のため

首相が積極姿勢を示すのは、生成AIの本格利用が「産業構造の大転換になり得る」(首相側近)と見ているためだ。この側近は、AIが人類の知能を上回る「シンギュラリティー」につながる可能性も指摘した。(出所:JIJI.com)

 AIに対し危機感を持って当然なのかもしれません。しかしそれ以前に、政府は世界から遅れることになってしまう現実を真剣に自らに問うた方がよいのかもしれません。

 記事によれば、閣僚会議が設置されるのは、複数の省庁にまたがる課題であり、国を挙げて取り組む必要があるためとし、また関連技術の開発には、インターネット上で英語に比べて少ない日本語のデータと情報を蓄積することも必須で、「どうやって追い付き追い越すか、正直に言って暗中模索している段階だ」と関係者が述べたといいます。

 言っていることは間違いはないのでしょうが、国がわざわざ音頭を取るようなことなのでしょうか。新しい有用な技術は、それを使う人々の目線に立ち、その人たちにとって便利なものでなければなりません。それを実現するのが企業の使命であり、そのために企業が存在し、サービスを開発するのです。

 政府の”都合”で政府主導としようとするから、的外れなものばかりになるのでしょう。国家のため、国益のためと言えば聞こえはいいですが、それは国民不在で進められているように思えてならないのです。

 

「参考文書」

自治体初!横須賀市役所でChatGPTの全庁的な活用実証を開始(2023年4月18日)|横須賀市

農水省が4月中にも中央省庁初のChatGPT利用、先陣切って実際の業務で使うワケ | 日経クロステック(xTECH)

横須賀市がチャットGPTを導入 何ができる?個人情報への懸念は | NHK