企業の採用活動で行われるウェブ型の適性検査で、就活生になりすまして第三者が受検する事件が発覚しました。
不正と知りながら、不正を犯してしまう、残念な事件です。
就活生のなりすまし受検、なぜ横行? 「不正を正当化」する学生たち:朝日新聞デジタル
「替え玉」が繰り返されていた疑いも浮上しているといいます。
「通過率95%以上」――。逮捕された容疑者(28)は、SNS(交流サイト)を通じ依頼主を探していたとされる。警視庁によると、受検代行を「4年前から4千件以上やった」と供述した。(出所:日本経済新聞)
ウェブテストの不正行為はかねてからの懸念だったといいます。SNS上には受検代行をうたうアカウントが複数あり、警察幹部は「事件は氷山の一角の可能性がある」と指摘しているそうです。
こうしたウェブ型の試験は使い勝手がよく、経費や時間の節約につながるといい、実施する側と受験者双方にとってメリットがあるといいます。
新型コロナウイルスの影響で採用のリモート化が進む中、不正対策の難しさが浮き彫りになった。不審な動きを検知する人工知能(AI)の導入など、信頼性の向上に向けた取り組みが求められる。(出所:日本経済新聞)
不正行為があれば、それを監視し不正行為ができないよう対策が検討されます。
しかし、不正行為がなくならなければ、それはいたちごっこ、不正をしようとする者は、その対策を超える次の手を考えるものです。
記事は、対策の決め手は、AIによるモニタリングと指摘しますが、そうなのでしょうか。
対策が必要であるとしても、それに頼るだけではなく、不正行為自体をなくさなければ、いつまでも不正は残り、いつしか不正ばかりの社会になってしまいます。
なぜ不正が蔓延ることになったのか、そこにメスを入れ、根本対策しない限り、いつまで経っても社会に信頼は醸成されず、常に他者に対し疑念をもって接しなければならなくなってしまいます。
それが理想的な社会のあり方なのでしょうか。不正を認めてはならないのです。
国を治める政治にあっては、閣僚が次々と辞任する「辞任ドミノ」が起こっています。虚偽を述べたり、不誠実であったり、不正行為があったりすることが理由でしょうか。
首相はそうした閣僚を擁護するかのように説明責任を果たせといいます。しかし、当人たちは善悪の区別もできずに、法に触れていなれば.....とか、見つからなければ......とかと言い訳ばかりです。これでは不正がなくなることはないのかもしれません。
こうした分別のない政治が選挙を通して選ばれてしまうのですから、社会に不正が蔓延するのは当然なのかもしれません。
こうしたことを、「まだマシ」と言って許してしまうのだから......
そうして信任を得たと勘違いした議員たちは傲慢になり、自らを省みようともしなくなるようです。
政権維持に汲々とする首相、保身に走る議員たち、国民負担ばかりが増えて一向に経済は改善しません。外交においては、勝手に隣国との緊張を高めては防衛力増強といっては、また国民負担を求めようとしています。この国はどこに導れてしまうのでしょうか。
論語に学ぶ
季康子(きこうし) 盗(とう)を患う。孔子に問う。孔子対(こた)えて曰わく、苟(いやし)くも子の欲せざれば、之を賞すと雖(いえど)も竊(ぬす)まざらん、と。(「顔淵第十二」18)
魯の国の実力者にて為政者である季康子が盗賊が多いのを患えて、孔子に対策を質問します。孔子は「あなたが不欲になれば、たとい盗みを褒めても、誰も盗みなどすることはしないのではないでしょうか」と答えたといいます。
盗賊を取り締まるための対策を強化することを勧めるのではなく、為政者自ら、盗賊まがいな行為を止めて、己の欲を抑制し自律し、そうした姿勢で政治を行えば、世の中も自然に治まるところに治まっていくということなのでしょうか。
「不正は割に合わない」、心の平静を乱してまで不正を犯すことの無意味さを理解しなければならないのでしょう。ご普通に努力すれば、それ以上に価値あることを手に入れることができる社会でなければならないのでしょう。
未来を担う若者たちが今回発覚した事件のような「不正」に巻き込まれないよう、不正を根絶し、不正なき社会に変えていくことが政治の喫緊の課題なのでしょうか。
この改善を実行できない者、善悪の分別無き者に、経済の再生や防衛力を論ずることができようはずがありません。何が正しいのか、不正なのかがわからないのですから。事実、事態は悪化の一途で、不正が蔓延しているのですから。
「参考文書」