10万人、ついに新型コロナの1日の新規感染者数が大台を超えました。沖縄などではピークアウトし、もうしばらくの我慢かと思っていたのですが、連日増と聞くと少々不安を覚えます。弱毒性でありながら、その感染力でじわじわと侵蝕していく。そればかりでなく、隠れオミクロンもあるようです。検査キットも不足しているようで、状況改善にはもう少し時間がかかってしまうのでしょうか。オミクロン株の脅威に戸惑うばかりです。
不確実な社会
コロナ禍がきっかけとなり、消費行動に変化が生まれ、労働や産業構造にも変化が現れ、価値観も変わろうとしている、そういわれるようになっています。
脱炭素、カーボンニュートラルなどが求められるようになり、社会課題は明確になりますが、それに対する明快な解を見出すことがまだできていないのかもしれません。そうしたことが漠然とした不安を生み、また不確実な社会にいることを意識させるのかもしれません。
国や企業が羅針盤を示してくれたらいいのでしょうが、目の前の課題に汲々とし、なかなか見えてきません。それがまた課題になっているのでしょう。
求められている存在意義
セブン & アイが不振の百貨店事業 西武やそごうを売却する方向で検討しているといいます。これまでの拡大路線を改めて、強みのコンビニ事業を軸に成長路線を強化するそうです。こうした企業の戦略見直しも、これからも続いていくことになるのでしょうか。
世界最大の米国の投資会社ブラックロックが毎年「CEO書簡」を公開しています。今年の書簡では次のようにあります。
企業経営者が一貫した主張、明確なパーパス、理路整然とした戦略、長期的な視点を持つことが今ほど求められている時はないでしょう。
年金基金など多くの機関投資家がブラックロックで資金を運用しているといいます。その運用成績は、私たちの退職後の生活に大きく影響します。
そのことを念頭にし、ブラックロックのCEOは、持続的に長期にわたってリターンを確保する上で重要と考えるテーマを書簡において取り上げ、それを投資先の企業に送っています。企業の業績改善なくして、そのリターンを還元することができないからなのでしょう。
そして、ブラックロックのCEO ラリー・フィンク氏は書簡で、「雇用主と従業員との関係ほど、パンデミックによって大きく変化したものはありません」といいます。
従業員と向き合うことを避ける企業は、リスクを負うことになります。離職率が高いとコストが押し上げられ、生産性は低下し、企業文化と組織としての知見が損なわれます。
経営者は、人材獲得競争で有利となるような環境が創れているかを自問する必要があります。
ブラックロックも同様です。この働き方をめぐる新たな世界において舵取りするために、従業員と力を合わせています。(出所:ブラックロック)
ブラックロックの分析によると、従業員との間に強い絆を築いている企業は離職率が低く、その業績は、パンデミックの期間に、より顕著に示すようになったといいます。
従業員が求めていることに、経営者は真に耳を傾ける必要があるのでしょう。そして、互いの理解促進のために、「パーパス」存在意義を明確に発信することが求められています。
論語に学ぶ
吾 十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。
六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず。(「為政第二」4)
「私は十五歳になったとき、学に志し、三十歳に至って独りで立つことができた。やがて四十歳のとき、自信が揺るがず、もう惑うことがなくなった。五十歳を迎え、天が私に与えた使命を自覚し奮闘することになった…」との意味です。
聖人 孔子の生涯をあらわした章で、規範的に受け取ることが自然なことと言います。
人も企業も、もしかしたら、年齢は別として、この一連のプロセスを辿るということなのかもしれません。
「志し、そして、立ち、惑わなくなるようになって、天命を知る」、そして、「人の声を素直に聞けるようになり、いつしか「矩を踰えず」、道理を踏み外すことがなくなっていく」。
企業に「パーパス」存在意義なくして、真の意味での「成長」がないのかもしれません。
社会とは自分の願いに関係なく存在し、進んでいくものかもしれません。今この災禍にあって、社会が変わろうとしているこのときは、実は様々な機会に恵まれているようにも感じます。
行先を示してくれる明確な道標はないのかもしれませんが、今ある環境をスタート地点とし、少し先の未来を予測して、それに向かっていくしかないのでしょう。そのときに自身の存在意義を明確しておく必要があるのかもしれません。そして、それが己のゆるぎない自信にもつながり、他者との相互理解の助けになるのではないでしょうか。
「参考文書」