回転寿司最大手のスシローのウニやカニなどを目玉にしたキャンペーンで「おとり広告」があったとして、消費者庁が「あきんどスシロー」に対し、再発防止を求める措置命令を出したといいます。
「なぜスシローが」、メディアが「おとり広告」に至った理由を憶測しています。それだけインパクトのある事件ということでしょうか。
大企業病なのか
東洋経済オンラインは、「大企業病の端緒」と憶測し、大企業病を交え解説しています。
スシローの悪質おとり広告に映る大企業病の端緒 | 外食 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
「今回のスシローに見える大企業病の症状では各部署は専門性を正しく追求しているのですが、連携はしていない。自分の部署だけ正しくあればいいという組織の病理が問題を引き起こしているように私には見えます」といいます。
自分たちの給料は上司が決める。ここからは一般論を交えますが、大企業病に陥っている会社の社員の中には、そう考えて行動する人がいます。多くの企業が創業時にそうだったように「本当は給料は顧客が払ってくれているのだ」という原点を忘れてしまう(出所:東洋経済オンライン)
不祥事を起こす企業体質の大企業は、何度でもまた別の違った形で不祥事を起こし続けることはあるといいます。
企業は社会の公器
パナソニックの創業者にして昭和の名経営者と言われる松下幸之助は、「企業は社会の公器」といったといいます。
PHP総研によると、企業は、社会が求める仕事を担い、次の時代に相応しい社会そのものをつくっていく役割があり、そのためにはトップのみならず、あらゆる職階において、本来の「経営」が機能しなければならないと松下は説いたといいます。
しかし、パナソニックも大企業に犯されてしまったのでしょうか、長く経営不振に陥った時期がありました。
論語に学ぶ
子、衛の霊公(れいこう)の無道を言う。康子(こうし)曰わく、夫(そ)れ是(かく)の如くんば、奚(なん)ぞ喪(うしな)わざる、と。孔子曰わく、仲叔圉(ちゅうしゅくぎょ)は賓客を治め、祝鮀(しゅくだ)は宗廟(そうびょう)を治め、王孫賈(おうそんか)は軍旅を治む。夫れ是の如し。奚ぞ其れ喪わん、と。(「憲問第十四」19)
孔子が衛国の君主霊公が無道であると非難しました。季康子が「それなのに、どうして、国君の地位を失わないのか」と尋ねました。すると孔子は「仲叔圉が外国使節に応対し、祝鮀が国家祭祀を司り、王孫賈が軍隊を掌握しております。そうでありますかぎり、国君の地位は揺るがない」と答えたといいます。
「霊公」、衛の国の君主。夫人である南子を寵愛し、喜ばせるために、以前から彼女の愛人だった宋朝を重臣として迎えたそうです。国が乱れるのも当然なのかもしれません。
「仲叔圉」、孔文子のこと。「祝鮀」、霊公に仕え、ある国際会議で席次争いのとき、雄弁をふるって勝利し名をあげたそうです。「王孫賈」、衛国の権臣。君主が問題があっても、それなりの人物がいれば、国はとりあえず治るのでしょうか。しかし、やがて衛の国でも内乱が起きます。
大企業病とは
パナソニックに名を変える前、松下電器産業には「大企業病の戒め」という標語があったといいます。
- 自分はよくやっていると自惚れている
- 上司は部下を叱らない
- タブーが多い
- 決めない・決まらない
- 上を向いて仕事をしている
- 報告や説明は巧いが自らはやらない
- 現状に甘んじ新しいことに挑戦しない
東洋経済オンラインが指摘した「給料は顧客が払ってくれているのだ」ということを、もし皆が理解していたなら、松下の「大企業病の戒め」のような行為に陥ることはないのかもしれません。
もっとも大切であることは、理解はしつつもつい忘れがちになったりするのかもしれません。企業運営では、様々な目標やKPIが部門ごと、個人ごとに設定され、数字を追うことが仕事になったりはしないでしょうか。
顧客からいただく代金があって企業は成り立ちます。そのお金は、顧客に有益サービスや商品などを通して奉仕することでいただくことができるものであるはずです。目標やKPIは、それが細分化されたものであるべきです。社会のため、顧客のためというもっとも大切なことが抜け落ちれば、大企業病に侵されることは避け得ないのかもしれません。
「参考文書」
【研究報告】企業は社会の公器―これからの社会をつくる企業経営とは | 政策シンクタンクPHP総研
スシロー元従業員「考えられない」”おとり広告”で措置命令…一度も提供しない店舗も 「売切御免!」が悪質と判断か