「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

なぜ内閣支持率は向上したのか、成果がないからなのか ~ 炉辺閑話 #91

 

 政権発足から3カ月余り、1月の内閣支持率が51.7%(時事通信)となり、目立った実績もない中で支持率が上向いているという。

「負の遺産」清算、懸案先送り 内閣支持率が異例の上昇―時事世論調査:時事ドットコム

 コロナ対応で一定の評価を得、過去の政権の「負の遺産清算を急ぎ、批判を招きそうな懸案は先送りする政治姿勢は見逃せないとJIJI.comは指摘する。

負の遺産の後始末にも余念がない」。

安倍政権下で発覚した森友学園問題をめぐる公文書改ざん。自殺した財務省近畿財務局職員の遺族が起こした訴訟で、損害賠償責任を認めて訴訟を終わらせる同省方針を「それでやってくれ」と了承。遺族が求めた真相解明の機会を葬った。(出所:JIJI.com)

過去を清算する

「行政の私物化」と批判を招いた安倍元首相の「桜を見る会」については、開催することは考えていないと明言し、「世紀の愚策」と酷評された布製「アベノマスク」は大量在庫問題も年度内の廃棄を決めるなど、過去の過ちを積極的に清算しているようだ。

 

 

 また、「既定方針に固執しない柔軟さも目立つ」と、JIJI.comはいう。

 18歳以下への10万円給付では、現金・クーポン併用に批判が集まると、全額現金支給の容認にかじを切り、その「朝令暮改」ぶりも、「評価する」が「評価しない」を大きく上回ったという。

「敬に居(お)りて簡を行ない、以てその民に臨まば、亦(また)可ならずや。簡に居りて簡を行なわば、乃(すなわ)ち大簡(だいかん)なること無からんや」。(論語「雍也第六」2)

 論語にある孔子の仲弓の言葉で、「己に対して厳しく自律し、他者に対して寛大にして政治を行なうべきではあるまいか。己に寛大、そのまま民にも寛大というのでは、無秩序でなってしまう」と意味する。

「己に寛大」だった過去の政治が無秩序を生んでいたことに気づいたのだろうか。

dsupplying.hatenadiary.jp

 JIJI.comによれば、「何かあったらすぐ修正し、発言も変える。それが国民に好意的に受け止められている」と、立憲民主党幹部が発言し、自民党の若手は「政策が評価されたわけでなく、目の前の問題にその都度対処しているからにすぎない」と冷めた声も聞こえているという。

 批判覚悟の対応も時には必要なのかもしれない。

「己に寛大」で、自らの失策を取り繕ってばかりでは、何の進歩もなくなってしまう。

論語の教え

「誰か能(よ)く出づるに戸(こ)に由らざらん。何ぞ斯の道に由る莫(な)きや」と、「雍也第六」17にある。  

dsupplying.hatenadiary.jp

「外に出るとき、門戸を経ない者があるだろうか。同じく世に出るとき、どうして人の道を踏まないで歩み出すことがでありえようか」と読まれる。

 人としてあるべき道を辿ろうと思えば、まずは秩序の回復からということであろうか。そうであるなら、この先の党改革も避けて通れないのだろう。

 

 

「樊遅(はんち)知を問う。子曰わく、民の義を務め、鬼神を敬して之を遠ざくれば、知と謂(い)う可し、と。仁を問う。曰わく、仁とは、難きを先にし獲るを後にす。仁と謂う可し」と、「雍也第六」22にある。

dsupplying.hatenadiary.jp

 弟子の樊遅に「知」とは、「仁」とは問われ、孔子が物わかりの良くない弟子に答えたものといわれる。

 首相を擁護する気はないが、民としての義を守り、神霊を尊び俗化、つまり、過ちのあった過去の政治を範とせず感化されない、その上で、国民に不人気だったこと、これまで手を付けることができなかった「難き」を先にしたら支持率が向上した、ただそれだけのことなのかもしれない。

「政権の真価が問われるのは、まだまだこれからと言えそうだ」と、JIJI.comはいう。そうなのだろう。

 

 

難きを先にし獲るを後にす」、まだやらねばならないことが多々あるのだろう。

 政府の基幹統計の7割ではオンライン集計もなされず、デジタル化には程遠く、文書の改ざんやデータ廃棄問題も後を絶たない。無秩序になってしまった行政の象徴のようなものだ。そればかりでなく、これまで原発問題もずっと放置されてきた。

 こうした問題に筋道を立て、成果があれば、もう一段支持率向上にもつながっていくのではなかろうか。