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【プライバシー保護と防犯】JR東日本はルール未整備の顔認証機能付き防犯カメラをなぜ導入したのだろうか ~炉辺閑話 #41

 

 JR東日本が首都圏の一部の駅に設置した顔認証機能付きの防犯カメラを使い、刑務所からの出所者、仮出所者の一部を駅構内で検知する仕組みを導入していたという。

 共同通信によれば、顔認証技術を巡る社会のルール作りが進んでおらず、運用開始から今月上旬までに登録した事案もないため、撤回したと説明している。

容疑者として逮捕された時点で報道された顔写真などをデータベースに登録。出所後、駅構内に設置した顔認識機能がある防犯カメラに映ると自動的に検知する仕組みで、駅の警備員らが声をかけ、必要に応じて手荷物を調べるケースを想定していた。 (出所:朝日新聞

 

 

 朝日新聞によれば、通勤客ら駅利用者の顔の特徴などの顔認識データを撮影・検知することについて、個人情報保護委員会は「本人同意は不要」と判断しているという。顔認識データは、本人の同意なしの取得を禁じている「要配慮個人情報」にはあたらないとの理由からだそうだ。

「駅で出所者を顔認識」とりやめ JR東「社会的合意まだ得られず」:朝日新聞デジタル

個人情報保護法では、服役していたという情報は「要配慮個人情報」にあたり、取得には本人同意が必要だが、法令に基づく場合や人の生命、身体、財産の保護のために必要な場合は同意なしに取得できるという例外規定がある。同委は被害者等通知制度に基づいてJR東が提供を受ける今回のケースはこの例外にあたる、とみる。(出所:朝日新聞

 防犯理由ということは理解できても、一方的に利用目的を告知し、顔認識機能付きで撮影されることに抵抗を感じる。生体情報はプライバシー保護の対象ではないのではなかろうか。

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  IBMは昨年、汎用の顔認識テクノロジー市場から撤退すると公表し、その理由を「集団監視や、人種を観点にした分析、基本的な人権や自由の侵害のほか、われわれの価値観や、信頼と透明性の原則に一致しない目的のために利用される、他のベンダーらによって提供されている顔認識テクノロジーを含む、あらゆるテクノロジーの利用について断固として反対するとともに、その使用を許容しない」とした。

 

 

 防犯という大義名分はあるのかもしれないが、真にプライバシー保護と両立するのだろうか。何でもかんでも、AIで効率化することもなかろう。

 目的を間違えると、時として誤用が始まり、それが都合よく解釈されたりする。

 米アマゾンとマイクロソフトは昨年、法整備が行われるまで、顔認識AIを警察には提供しないと表明した。

駅で出所者の「顔」検知、JR東が取りやめ…「社会の合意不十分」と方針転換 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン

 読売新聞によれば、国内には顔認識カメラの運用を直接規制する法令はなく、ルール整備が進むまでの間、JR東日本は検知を中止するという。「検知」は、カメラに映った人の顔情報と、データベースに登録した人物の顔情報を自動照合する仕組みのことをいうと説明する。「顔認証」ということであろうか。

 ただ、「指名手配中の容疑者」や「うろつくなど不審な行動をとった人」の「検知」は続けると読売新聞が伝えている。いずれにせよ、顔認識はされているということなのだろうか。

 

 

 朝日新聞によれば、JR東海JR西日本JR九州は顔認識機能がある防犯カメラは導入していないという。JR西日本では、国の「情報通信研究機構」が過去に大阪駅の駅ビルで通行人の顔を撮影する実証実験を検討したが「プライバシー権の侵害」などと反発があったと伝える。

論語の教え

「晋の文公は譎(いつわ)りて正しからず。斉の桓公は正にして譎らず」と、論語 「憲問第十四」15にある。

「晋国の文公は、いつわりの道を踏み、正義の人ではなかった。斉国の桓公は、正義の人であり、いつわりの道を踏まなかった」と読む。

dsupplying.hatenadiary.jp

「文公」、「桓公」、それぞれ時期は異なるが、諸侯の上に立ち覇者となり、大会盟を行った人物である。

「文公」は本来なら天子の下に諸侯が集まるべきところを、自国に諸侯を集めたのみならず、狩りという名目で天子を自国に呼び寄せたという。一方、「桓公」は、あくまで天子中心の立場であったという。

 自ら正義と主張したところで、それが万人が受け入れることでなければ、それは偽りの道ということなのだろう。