子 人と歌いて善ければ、必ず之を反(かえ)さしめ、而(しか)る後に之に和す。(「述而第七」31)
(解説)
「孔子は、他人と歌われるとき、相手が正調であれば、歌を繰り返させた後、一緒に歌われることが常であったとのことである。」(論語 加地伸行)
桑原の解説。
孔子は他の人と一緒に歌の会を開くときに、もしいい歌を聞くと、きっとそれをもう一度歌ってもらい、そのあとで今度は自分も加わって合唱した。「反」は復、つまりもう一度繰り返すこと。最初の「人と歌う」をいうのは、孔子が自分の知らぬ歌を合唱することはできぬはずだから、合唱ではない。合唱をしうるような歌のための集まりをもつと解しておきたいという。
仁斎がこの章を、孔子が善を人ともにしようとした、つまり、歌なぞは小さな芸に過ぎないが、孔子は、そうしたところにおいても、善に従おうとされたと読むのは、あまりにも道徳主義的解釈であるという。
もし音楽好きという以外に、意味付けをしようとするのなら、むしろ徂徠に従って、当時は歌をうたうさいには、このようにするのが礼法すなわちエチケットだったと解すべきであろうという。
(参考文献)