「資産運用立国」、岸田首相の目玉政策の一つと言われています。このところの市場の活性化からして評価してもいい政策なのかもしれません。最終的な評価はそれが目的とする成果があがってからのことなのでしょうが、とっかかりとしては一定の評価があってよさそうです。
[新政権の宿題]ブラックロック有田氏「海外資金呼ぶ市場改革継続を」:日経ビジネス電子版
「資産運用立国」は、年金基金など資金の出し手と運用会社の改革を柱とする政策で、金融資産からも所得を得られるようにする狙いがあるといいます。その語感からか、個人の資産形成を促すことに焦点が当たりがちで、そのための政策とみられるようですが、日本経済の活性化を図るためのもので、インベストメントチェーン=投資の連鎖=をうまく回すためのもののようです。本質的には経済全体の問題とし、様々な政策を繰り出し、民間企業に対しても投資を促進するように要請するなどして、その実現を図るもののといいます。
岸田首相が退陣を前に、ニューヨークで資産運用大手各社とのパネルディスカッションに参加し、日本への投資を海外投資家に呼びかけたそうです。
岸田文雄首相「日本へ大胆な投資を」 米ニューヨークで資産運用大手に - 日本経済新聞
金融市場改革など「資産運用立国実現プラン」の成果が上がり、投資家にとって日本市場はかつてないほど魅力的な投資先になってきているといいます。コーポレートガバナンス(企業統治)改革や東京証券取引所の「PBR(株価純資産倍率)改革」などを進めてきた結果、日本企業が魅力的に映るようになり、海外に選ばれる国になってきたそうです。
首相が面談したプライベートエクイティーファンドのKKRやブラックストーンの経営トップは、日本のPE投資ははまだ黎明期で、大いに伸びしろがあるとの認識を示し、市場改革の継続が日本への投資熱を長期に維持するとの見方を示したといいます。
日本のPE事業に「大きな伸びしろ」-KKRとブラックストーン - Bloomberg
日本には膨大な預金と年金残高があり、保有者が受け取るリターンは低いとKKRのCEOは述べたそうです。日本の保険会社との提携なども考えているようです。
また日本の主要企業も非中核事業の売却などに前向きになっており、投資機会が増えているそうです。
変化の少ないこれまでのビジネス慣行に少し風穴が開いてきているのでしょうか。KKRやブラックストーンの他にもベインキャピタルやカーライルなど米系PEファンドが日本企業を物色し、PEファンドの目的である「企業価値を高め、その後に売却」で成果をあげ投資家へ利益還元できているようです。
レッドバロン、米べインが買収へ 中古バイク販売最大手、上場視野 | 共同通信
半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスの上場延期のようにすべてのプロジェクトで成功することはないようですが、それでも改革は進み、悪いことはなさそうです。
論語に学ぶ
君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。(「里仁第四」16)
君子 教養人は義を理解し、小人は損得を理解すると孔子はいいました。
海外PEファンドに頼るだけでなく、日本企業の中から同様な動きがあれば日本経済もさらに活性化しそうです。しかし、変化を好まない傾向が強いからなのでしょうか、なかなか難しいようにも見えます。みなが自分の利益ばかり追求することなく、社会全体をよくしていこう、社会貢献しようとの義を持つようになれば変化のスピードが期待できるようになるのかもしれません。
岸田首相の本心もよく見えません。真に日本経済、そして日本社会を良くしようとしているのなら、情報発信も変わり、みながそれぞれの立場でその意図を理解し、もしかして能動的に動くことがあるのかもしれません。しかし、その本心は最後まで見えず、目に見える姿からは信用できないとの印象が残りました。それゆえ、義には近づかず、みなもまた個人の利益に走るだけで、ドラスティックな変化は起きなかったのでしょう。
国のリーダーが変わります。気がつけば国民みなが変わっていた、そんなことが実現できる人物がいいのでしょう。PEファンドの成功事例からすれば、まだまだ日本がよくなるポテンシャルがあることが証明されているのですから。リーダーの質次第ということのように思えてなりません。
「参考文書」
中古バイク販売レッドバロン、米ベインキャピタルが買収 DX促進 - 日本経済新聞
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