「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

歪んだ業界、影響を受ける社会、明らかになったジャニーズ問題

 ジャニーズ事務所の「再発防止特別チーム」が記者会見を開き、故ジャニー喜多川前社長による性加害問題について、長期間にわたり広範に性加害を繰り返していた事実を認め、事務所が適切な対応を怠り、解体的出直しのためには藤島ジュリー景子社長が辞任すべきとする調査報告書を事務所に提出したと公表しました。

ジャニーズ前社長の性加害を認定 外部専門家の特別チーム | NHK | ニュース深掘り

 報告書は、事務所の隠蔽体質を指摘、「見て見ぬふり」を続けた事務所の不作為も、被害の拡大を招いたとの見解を示しているといいます。また、人権を尊重しようという意識が希薄だったことなどずさんなガバナンス、管理体制などの問題もあげています。

 ジャニーズ事務所は「再発防止特別チーム」の調査報告を受け、「真摯に受け止める」とのコメントを発表、今後、記者会見を開き、事務所による取り組みを説明するとしたといいます。

 

 

 

報告書は、テレビ局など「マスメディアの沈黙」が被害を拡大させたとも指摘。性加害問題を正面から取り上げてこなかったことで「事務所は隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない」と強調した。(出所:日本経済新聞

 故人による異常行動を事務所が隠蔽してきた。人権を軽んじ、利益のみを追求してきた結果だったのでしょうか。それにマスメディアも加担、権力に忖度する形となって被害を拡大させ、また社会にも何らかの影響を与えてきたということなのかもしれません。メディアがそうした体質から脱皮できるかのも問われていそうです。

論語に学ぶ

吾が道は一以て之を貫く、と。曾子曰わく、唯(い)、と。子出づ。門人問うて曰わく、何の謂いぞや、と。曾子曰わく、夫子の道は、忠恕のみ、と。(「里仁第四」15)

「私の道はただ一つのもので貫かれている」と孔子がいうと、弟子の曾子は「おっしゃる通りです」と答えます。孔子が部屋を出た後、他の弟子たちが真意が掴めず「今のお話はどういう意味でしょうかと問うと、「先生の道は忠恕で貫かれていること」と答えました。

dsupplying.hatenadiary.jp

「忠」は自己に対する誠実、「恕」は他人に対する思いやり。二つ合わせて人間に対する愛情ということになるといいます。

 何においても大切なことであるように思います。これを日常生活において、また仕事においても上手に表現できるようになれば、今ある社会の閉塞感が和らいでゆくのような気がします。

 

 

 昔のように企業はマイナスの影響を隠蔽できなくなってきているそうです。ある意味で、透明性の向上は多少行きすぎともいえるといいます。これまでにはなかったことが、今では人々が容易にそれに気づくことができるようになっているといいます。

 これは何も日本に限った話ではなく、世界においても同じで、人権無視などの酷い事態が発覚すれば、企業はその改善を余儀なくされ、こうしたは名だたるグローバル企業において何度も目にしてきたことです。

社会が豊かになるにつれ、個人は社会正義の問題をますます重視するようになる。人権問題、そして人権を無視することの代償は、ますます注目されるようになる。これはある程度、世代によって考え方の異なる問題でもある。若い世代は世界の状況を本当に重視している。(出所:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー)

「社会正義」、難しそうなテーマです。個々人の価値観にも依るものなのでしょう。しかし、今のような複雑な時代にあっては、何が「社会正義」なのか、立場に関係なくそれを話し合っていかなければならないような気もします。それによって、相互理解が進むのであれば、避けては通れないのでしょう。「忠恕」、誠実さと思いやりがあって、対話は成立し、理解が生まれそうです。

もう隠蔽はできない

 社会は、それを構成するそれぞれが役割をはたして成り立っているのでしょう。しかし、それを歪めようとするから、社会が不健全になっていくような気がします。

「もう隠蔽はできない」、なんと重い言葉なのでしょうか。

 損保ジャパンの白川社長がビッグモーターの保険金請求に不正の可能性があることを知りつつ、役員会議で追加調査は行わずにいったん中止した取り引きを再開してはどうかと促していたことがわかったといいます。

 企業ばかりでなく、政治においても、それは同様なのでしょう。また、今回のジャニーズ問題で明らかになったマスメディアも同様なのでしょう。権力に手を貸すことなく、また忖度なしの報道が求められていることがはっきりしたようです。

 これを今の社会を変えていくきっかけにすべきなのでしょう。

 

「参考文書」

ジャニー喜多川氏の性加害認定 報告書、社長辞任求める - 日本経済新聞

世界の大企業はすでに気づいている「サステナビリティは生存戦略」という現実 連載『PURPOSE+PROFIT パーパス+利益のマネジメント』第10回 | サステナビリティ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

損保ジャパン社長 ビッグモーターとの取り引き再開促す発言 | NHK | 自動車