対立や争いは絶え間ないものなのでしょうが、それが気候変動の研究のような国際協調が求められる分野までに影響があってはならないのでしょう。
欧州各国がロシアに経済制裁を科し、そのあおりが科学研究の分野にも影響しているといいます。ドイツのマックス・プランク生化学研究所はロシア北東科学基地に対する資金提供を凍結したとロイターが報じています。
焦点:西側からの資金提供ストップ、苦境に陥るロシア科学界 | ロイター
それによると、この資金は、研究施設での人件費や計測機材の維持費に使われていたといいます。
気候変動により北極圏の永久凍土がどれくらいのペースで融解しているか、また地球温暖化への影響の強いガスであるメタンがどれくらい放出されているかを測定するための機材だ。(出所:ロイター)
こうした研究は緊急性が高いにもかかわらず中断されているそうです。永久凍土が融解すれば、氷に閉じ込められていた有機物が腐敗し、メタンや二酸化炭素といった温室効果ガスをさらに排出してしまいます。科学者らは、こうした排出によって気候変動が制御不可能な状態に陥る可能性があると懸念しているといいます。
論語に学ぶ
子貢曰わく、貧にして諂うこと無く、富みて驕ること無くんば、如何、と。子曰わく、可なり。未だ貧にして楽しみ、富みて礼を好む者には若(し)かざるなり、と。
子貢曰わく、詩に云う、切するが如く、磋するが如く、琢するが如く、磨するが如し、と。其れ斯の謂いなるか、と。子曰わく、賜や、始めて与に詩を言う可きのみ。諸に往を告げて、来を知る者なり、と。 (「学而第一」15)
孔子の弟子で秀才の子貢が「貧乏はしていても媚び諂うことなく、どんな術を使ってでも物を求めるようなことはせず、金持ちになっても驕り高ぶらず、物力で偉そうにしたりしない。そういう生き方はいかがでしょうか」と質問します。孔子は「いいことだ。貧しくとも人間の生き方を考えたりして楽しく暮らし、豊かであっても世の道理を求めようとする者には及ばないだろう」と答えます。
孔子の答えを聞いた子貢は、すぐさま『詩経』の「衛風」の「淇奥(きいく)」の第一章を想起して「切磋琢磨」とはこのことを言うのでしょうかとたずねる。
「切るごと、磋(と)ぐごと、琢(う)つごと、磨(す)るごと」と。
すると孔子は「賜君、分かっている君となら詩を談じ合える。話を一度聞くと、その先のことが見える力がある」と褒めたといいます。
彼の淇のかわの奥を瞻(み)れば、緑の竹の猗猗(いい)とうつくし
有にも匪(あざや)けき君子は、切するが如く磋するが如く、琢するが如く磨するが如し・・・
緑の竹藪のそばに立派な貴族が立っている。それは衛の名君武公だとされ、彼が人格修養につとめることを歌ったものとされている。
つぎの四文字はすべて加工を示す動詞であって、骨は「切」、象牙は「磋」、玉は「琢」、石は「磨」という。道徳をいやがうえにもみがくという意味である。
子貢は諂いと驕りのないことを最高と考えていたのだが、孔子に教えられて、学問の道には終わりがないことを悟って、この詩を流用引用したのだと仁斎はいう。(引用:「論語」桑原武夫)
仲間同士互いに戒めあい、励ましあい、競いあって向上することも意味します。
切磋琢磨することなく気候変動という地球規模の課題は解決できないのではないでしょう。必要なことは対立して争うことではないはずです。そうしたことを陥らないように徳を磨くことが求められています。